中小企業の利益を3倍にする経営コンサルタント 本田信輔です。
今回のテーマは「物流が止まった時に備えて、中小の食品企業や菓子業がいますぐできる取り組み」についてです。
もしも、明日から「原材料や資材が予定通り届かない」「商品が製造・出荷できない」
そんな状況になったとしたら、、、。そう想像する経営者の方々が増えてきているように感じます。
実際、
・原材料の確保が難しい
・仕入れ価格の高騰はどこまで続くのか
・問屋や商社が在庫を持てなくなっている
・包装資材の急な値上がり
という質問を多くいただくようになりました。
地震・豪雨などの災害が、国内でも頻発しています。
国際的に見れば、世界のどこかで緊張や対立が続き、日本を取り巻く地政学リスクも高まっている。海上輸送の安定性も以前ほど当たり前ではなくなっています。
こういった状況は、サプライチェーン(原料調達から製造、物流、最終的にお客様の手元に商品が届く一連の流れ)が不安定になってきていることが要因です。
その中で大切なのは、
不安を煽ることではなく、事実は事実として受け止め、企業として”いざという時に、どのように事業継続するか”を、今からどのように備えておく。
ここに尽きると思います。
今回は、そのための実務的なポイントを整理してお伝えします。
1.物流停止で中小規模の食品企業が直面する3つの不安
特に食品業は原材料・物流・エネルギーに依存する部分が多く、“物流ストップ”の影響がすぐに出る業種です。
まずはここを把握することから始めます。
①原材料や資材の輸入依存の不安
食品業で商品製造に欠かせない原材料の中には輸入・海外由来のものが多くあります。
例えば、菓子業の場合、
・小麦
・油脂類(バター、マーガリン、植物油等々)
・砂糖
・ナッツやドライフルーツ類
・包装資材(フィルム、トレー、容器)
こういった原材料や資材の供給が遅延したり、ストップすると生産計画が成り立たなくなります。
特に気をつけて欲しいのは包装資材関係。原材料は地元・国内調達しているよという会社でも包装資材のほとんどは海外からの輸入に頼っています。
包装資材がストップすると、「商品製造・出荷・販売」が全て即アウトになるので企業としての重要度はかなり高くなります。
②国内物流網がすでに厳しい状況という不安
今でも、トラックドライバー不足や働き方改革などで通常時でも「遅れやすい」などの問題があります。
最近では海外からのサイバー攻撃によるシステム障害で、物流全体をとめざるえない企業のニュースもあるなど、国内の物流網はすでにリスクを抱えた状況です。
この状況に加え、物流網に何かあれば、原材料仕入れだけではなく、商品の出荷も遅れる・ストップする可能性があります。
③エネルギーや燃料価格の影響が大きい不安
食品製造業にとって、ガス・電気・燃料代などは“ほぼ逃げられないコスト”です。
エネルギー価格が上がってしまうと「製造・保管、輸送」すべてが影響を受け、会社の利益が激減する恐れが高くなります。
もちろん、自分たちが製造する商品だけではなく、農家さんや原料製造メーカーなど影響範囲も広いです。
2.どんな事が、どんな順番で、どんな影響が出るのか
備えを考えるときは、「何が、どの順番で起きるか」を想定することが重要です。
実際に物流が停止する場合、食品企業では次のような順番で影響が出ると想定できます。
①最初に起きる:輸入原材料の遅延・価格高騰
おそらく最初に影響が出るのは遅延と価格高騰です。
特に在庫の少ない原材料や資材、在庫の少ない時期だとすぐに遅延や価格上昇につながります。
② 次に起きる:物流(輸送)の遅れや停止
物流は一度混乱すると、解消に時間がかかります。
・荷物が届かない
・配送日程が読めない
・運賃が上がる
などの影響が出ます。
③その後にくる:包装資材ストップ
食品業は「袋、箱、トレー」がないと、売ることだけでなく、出荷すらできなくなります。
包装資材の多くは海外原材料のため、急激に値上がりしたり、入荷がストップする可能性が高いです。
④ 最後にくる:エネルギー価格の高騰
製造・保管・輸送のあらゆる部分に影響して、経営を圧迫します。
3.中小食品企業が“今からできる”10の備えリスト
今の時点で、実際に現場で取り組んでいたり、想定できる対策をまとめました。
①原材料をA・B・Cの3ランクに分類して、依存度を整理しておく
A=「止まったら生産できない・停止する」
B=「代替することができる」
C=「止まってもなんとかなる」
主要な品目について整理しておくだけでも、経営判断が変わります。
②最重要原材料は何か?“代替供給ルート”を確認しておく
会社の生命線になる原材料、そして包装資材等については、
・今の取引先が厳しい場合、他社でもなんとかなるか?
・国内調達は可能か?
・輸入先を複数持つことができるか?
を考えておくことが必要です。
素材変更が可能なのかどうか。素材が変わったときに商品品質は問題ないか?
こういったことも今のうちから準備しておくことも大事です。
③国内調達への切り替えは可能か確認しておく
最も怖いのは輸入が止まること。海外からの輸送ルートが止まることです。
その場合は、多少高くなっても、安定した国内調達ができるように検討しておく意味は高いです。
地元調達をするなら、地元の事業者との関係性を深めておく。
同業他社との共同調達や仕入れ先の相互融通なども視野に入ります。
④包装資材の考え方をリスク対応型にしておく
食品業の場合、包装資材のストップは即製造や営業が止まる可能性があります。
少なくとも、主要商品についての包装資材について、在庫量(何日分)をどの程度にするか設定しておく必要があります。
商品によっては、包装資材がなくても問題ないか?調達可能な包装資材に変更して販売できるか?も検討に入ります。
昨今の包装資材高騰で、多くの会社が資材に対してシビアになっています。
それと矛盾することもあるかと思いますが、検討する優先度は高いです。
⑤まずは90日間“最低限製造できる材料ストック基準”作り
これを全ての商品に該当させると、経営に無理が出ます。
まずは売れる主力商品に絞り込んで準備しておきます。
⑥ロット縮小や商品・メニューの絞り込み優先度を決めておく
原材料や資材の分類や、今の売上構成などを考慮して、
“何を作り続けるか”
“何をやめるか”
を明確にしておくと、いざというときの混乱が軽減されます。
⑦外注先、関係先のバックアップを確保する
加工委託先や仕入れを一社に依存している場合は、リスクが大きくなります。
商品に直接関わる原材料や資材だけではなく、道具・衛生消耗品(マスク、手袋、消毒液等々)などのルートをどのように確保するか。一社依存のリスク等も踏まえておく必要があります。
⑧災害時の従業員シフト・安否確認体制を整える
中小食品業はどうしても人に頼る部分が多いです。
昨今の人手不足から、外国人の方を雇用する会社も増えています。
いざという時に人員を確保できるかどうか、従業員の安全を確保できるかどうか。
少ない人員で作れる商品は何か。製造時間や場所なども。
こういった部分も今から、考えておくことです。
⑨売上減少や利益減少を抑えるために
・商品の“緊急時ラインナップ”はどうするか
・コスト高騰時の価格設定はどうするか
・販売ルートはどうするか?
店舗の営業スタイル、卸先との協力体制、通販・ECなどの対応。
お客様との関係づくり。
⑩経営者としての心の準備を
いざという時、従業員も地域も、経営者がどのように振る舞うかを見ています。
それは東日本大震災の時でも同じでした。
何を大事にするのか。どこを捨てるのか。何に集中するのか。
危機に備えて、できるかぎり落ち着いて判断できるように。
それが経営者の役割です。
まとめ
危機というのは、いつ起きるかわかりません。
もしかしたら、起こらないかもしれない。
ですが、“備えた会社は強い”
これは間違いないと思います。
「恐れる」のではなく、今は「準備しておく」こと。
いざという時に、備えておいた分だけ会社が事業継続できる選択肢が増えます。
【筆者プロフィール】
中小企業の利益を3倍にする経営改善コンサルタント
本田信輔(株式会社ミタス・パートナーズ代表)
地方の中小企業を中心に、「強みの再発見と価値化で利益を高める」「価格より価値で選ばれるブランドづくり」を支援。
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