ミタス・パートナーズ
経営コラム

物流が止まったらどうする?食品・菓子企業が今すぐできる10の備え

中小企業の利益を3倍にする経営コンサルタント 本田信輔です。

今回のテーマは「物流が止まった時に備えて、中小の食品企業や菓子業がいますぐできる取り組み」についてです。

もしも、明日から「原材料や資材が予定通り届かない」「商品が製造・出荷できない」場合にどうするか。

そんな状況になったとしたら、、、。そう想定せざるをえない世界情勢や環境・災害が増えてきて。実際に先を見ている経営者の中には事前の準備(BCP:事業継続計画の立案)をしておく会社も出てきています。

実際、

  • 原材料や資材の確保が難しい
  • 仕入れ価格の高騰はどこまで続くのか
  • 問屋や商社が在庫を持てなくなっている
  • 包装資材の急な値上がりや不足
  • 石油やガソリン、ガスなどのエネルギーはどうなるのか
  • 原材料や包材が、入らなくなったり高騰したら、経営として何をしなければならないか
  • 主力商品の包材の値上げ&発注制限で先が見通せない。どのようにしたら良いか
  • 全体的に、コストが急速に上昇した時の対処法

という質問を多くいただくようになりました。

地震・豪雨・異常気象などの自然災害が、国内でも頻発しています。

国際的に見れば、世界のどこかで緊張や対立が続き、日本を取り巻く地政学リスクも高まっている。海上輸送の安定性も以前ほど当たり前ではなくなっています。

こういった状況で、中小企業ほどサプライチェーン(原料調達から製造、物流、最終的にお客様の手元に商品が届く一連の流れ)が不安定になってきていることを事実として受け止めておく必要があります。

その中で大切なのは、

不安を煽ることではなく、事実は事実として受け止め、企業として”いざという時に、どのように事業継続するか”(BCP:事業継続計画)を、今からどのように備えておく。

ここに尽きると思います。

今回は、そのための実務的なポイントを整理してお伝えします。

目次

1.物流ストップで中小規模の食品企業が直面する3つの不安

特に食品業は原材料・物流・エネルギーに依存する部分が多く、“物流ストップ・物流停止”の影響がすぐに出る業種です。

まずはここを把握することから始めます。

①原材料や資材の輸入依存の不安

食品業で商品製造に欠かせない原材料や資材の中には輸入・海外由来のものが多くあります。

例えば、菓子業の場合、

  • 小麦
  • 油脂類(バター、マーガリン、植物油等々)
  • チョコレート、ココア
  • 砂糖
  • ナッツやドライフルーツ類
  • 添加物(乳化剤、安定剤など)
  • 包装資材(フィルム、トレー、容器)
  • 衛生消耗品(ゴム手袋、消毒剤等)

こういった原材料や資材の供給が遅延したり、ストップすると生産計画が成り立たなくなります。

特に気をつけて欲しいのは包装資材関係。商品自体の原材料や素材は地元・国内調達しているよという会社でも、包装資材や衛生消耗品のほとんどは海外からの輸入原料が占めています。

包装資材がストップすると「商品製造・出荷・販売」が全て即アウトになるので企業としての重要度はかなり高くなります。

②国内物流網がすでに厳しい状況という不安

今でも、物流2024年問題をはじめ、トラックドライバー不足や働き方改革などで通常時でも「遅れやすい」「輸送能力が低下する」などの問題があります。

最近では海外からのサイバー攻撃によるシステム障害で、物流全体をとめざるえない企業のニュースもあるなど、国内の物流網はすでにリスクを抱えた状況。

この状況に加え、国内外の物流網に何かあれば、原材料仕入れだけではなく、商品の出荷も遅れる・ストップする可能性があります。

③エネルギーや燃料価格の影響が大きい不安

食品製造業にとって、ガス・電気・燃料代などは“ほぼ逃げられないコスト”です。

エネルギー価格が上がってしまうと「製造・保管、輸送」すべてが影響を受け、会社の利益が激減する恐れが高くなります。

もちろん、自分たちが製造する商品だけではなく、生産者や農家さん、原料製造メーカー、包材、など取引先からくる影響範囲も広い。

2.どんな事が、どんな順番で、どんな影響が出るのか 中小企業の物流BCP(事業継続計画)

備えを考えるときは、「何が、どの順番で起きるか」を想定し、どのように対処するかが重要です。

実際に物流が停止する場合、食品企業では次のような順番で影響が出ると想定できます。

※その時々で起きる状況によって、順番は変わります。

①最初に起きる:輸入原材料の遅延・価格高騰

おそらく最初に影響が出るのは遅延と価格高騰です。

特に在庫の少ない原材料や資材、在庫の少ない時期だとすぐに遅延や価格上昇につながります。

状況によっては、原材料等ではなく、エネルギー関連(石油等)が不足する、コスト急騰が先行するケースも考えられます。

② 次に起きる:物流(輸送)の遅れや停止

物流は一度混乱すると、解消に時間がかかります。

  • 荷物が届かない
  • 配送日程が読めない
  • 運賃が上がる

などの影響が出ます。

③その後にくる:包装資材や衛生消耗品のストップ

食品業は「袋、箱、トレー、フィルム、シール・ラベル、プラスチック容器など」、「製造等で使用するゴム手袋や、消毒用アルコール・洗剤等の衛生消耗品」がないと、売ることだけでなく、製造や出荷すらできなくなります。

製造は国内であっても包装資材の多くは海外原材料(石油由来のナフサ、ポリエチレン・プラスチック、紙のパルプなど)のため、急激に値上がりしたり、入荷がストップする可能性が高いです。

しかも、これらについては供給が回復したとしても、以前のような仕入れ価格に戻らない可能性が高いこともあります。

④ 最後にくる:エネルギー価格の高騰

製造・保管・輸送・販売のあらゆる部分に影響して、経営を圧迫します。

3.中小食品企業が“今からできる”10の備えリスト

今の時点で、実際に現場で取り組んでいたり、想定できる対策をまとめました。

①原材料をABCの3ランクに分類して、依存度を整理しておく

A=「止まったら生産できない・停止する」

B=「代替することができる」

C=「止まってもなんとかなる」

主要な品目について整理しておくだけでも、経営判断が変わります。

②最重要原材料は何か?“代替供給ルート”を確認しておく

会社の生命線になる原材料、そして包装資材等については、

  • 今の取引先が厳しい場合、他社でもなんとかなるか?
  • 国内調達は可能か?
  • 輸入先や代替品を複数持つことができるか?

を考えておくことが必要です。

原料変更が可能なのかどうか。代替品に変わったときの商品品質に問題ないか?

こういったことも今のうちから準備しておくことも大事です。

③国内調達への切り替えは可能か確認しておく

最も怖いのは輸入が止まること。海外からの輸送ルートが止まることです。

その場合は、多少高くなっても、安定した国内調達ができるように検討しておく意義は高くなります。

輸入が止まることによって、連鎖的に、今度は国内原料の争奪競争が強くなります。

そのことも想定しつつ、地元調達をするなら、地域の事業者との関係性を深めておくこと。

これは地方に拠点を持つ企業として強みになる可能性もあります。

また、同業他社との共同調達や仕入れ先の相互融通なども視野に入れておく。

④包装資材の考え方を「リスク対応型」にしておく

品業の場合、包装資材のストップは即製造や営業が止まる可能性がある、経営にとってに重大なポイントです。

少なくとも、主要商品についての包装資材について、在庫量(何日分)をどの程度にするか設定しておくことが必要。

商品によっては、包装資材がなくても問題ないか? 調達可能な包装資材に変更して販売できるか?も検討しましょう。

昨今の包装資材高騰や販売数の減少で、多くの会社が資材コストや発注・在庫管理に対してシビアになっており、それと矛盾することもあるかと思いますが、検討する優先度は高いです。

⑤まずは90日間“最低限製造できる材料ストック基準”作り

前提として、この基準を全ての商品に該当させると、当然ですが経営に無理がでます。

そのため、まずは次の項で説明している緊急時の商品構成について考え、売れる主力商品に絞り込んで準備しておくことです。

⑥ロット縮小や商品・メニューの絞り込み優先度を決めておく

原材料や資材の分類や、今の販売構成、製造ライン等を考慮して、

  • 何を作り続けるか
  • 何をやめるか

を明確にしておくと、いざというときの混乱が軽減されます。

⑦外注先、関係先のバックアップを確保する

加工委託先や仕入れを一社に依存している場合は、リスクが大きくなります。

商品に直接関わる原材料や資材だけではなく、道具・衛生消耗品(マスク、手袋、消毒液等々)などのルートをどのように確保するか。

一社依存のリスク等も踏まえておく必要があります。

⑧災害時の従業員シフト・安否確認体制を整える

中小食品業はどうしても人に頼る部分が多いです。

昨今の人手不足から、外国人の方を雇用する会社も増えています。

いざという時に人員を確保できるかどうか、従業員の安全を確保できるかどうか。

少ない人員で作れる商品は何か。製造時間や場所なども。

こういった部分も今から、考えておくことです。

⑨売上減少や利益減少を抑えるために

  • 商品の“緊急時ラインナップ”はどうするか
  • コスト高騰時の価格設定はどうするか
  • 販売ルートはどうするか?

店舗の営業スタイル、卸先との協力体制、通販・ECなどの対応。

お客様との関係づくりは、新たな段階に入っていくことを考え、今から具体化していく必要があります。

⑩経営者としての心の準備を

いざという時、従業員も地域も、経営者がどのように振る舞うかを見ています。

それは東日本大震災の時でも同じでした。

何を大事にするのか。どこを捨てるのか。何に集中するのか。

危機に備えて、できるかぎり落ち着いて判断できるように。

それが経営者の役割です。

 

物流危機をただ悲観するのではなく、強い収益構造に変えるチャンスと捉える。そのための具体的なステップを以下で解説します。

【2026年3月追記】 物流危機を「利益体質」への転換点に変える

多くの食品メーカーや小売店が、今回の物流危機を「避けては通れない、困ったコスト増」「また、値上げをしなければならない」として、頭を悩ませていると思います。

しかし、私が中小食品企業の現場を見てきて確信しているのは、この状況だからこそ、価格転嫁(値上げ)以外の取り組みにも目をむけて、「利益率の高い、強い利益体質」へ転換できる大きなチャンスにできるということです。

原材料、資材、物流、エネルギー・・・、あらゆるコスト増を飲み込んでも、利益を残せる体質を作る。

そのための「価格戦略」と「新たな利益改善」の視点を整理しました。

①「売れば売るほど赤字」になる商品の改廃

物流危機を一つの機会として、商品やアイテム数の絞り込みを行います。
特に以下のような商品は改廃候補です。

  • 売れても利益にならない不採算商品
  • 製造や包装時、配送時に手間がかかるのに、売れていない商品
  • 一回製造したら、ずっと冷凍庫に保管されているような、保管期間が長い商品
  • 包材がいつまで経っても残っている商品
  • 「詰め合わせに入っているから」という理由だけで作っている商品

商品数を絞り込むことは、物流危機への対策だけではなく、原材料や包材の在庫を減らすことで資金繰りを改善したり、冷凍や冷蔵にかかる水光熱コストや、無駄なスペース(見えないコスト)を低減することにつながります。
また、製造現場・ラインの効率化、包装にかかる作業コストの改善にも直結します。

②「物流コスト」と「物流フロー」の見直し

例えば「送料一律」にしているのであれば、配送エリアごとに運賃を見直すタイミング。お客様も物流コストが上がっていることは理解していますから、配送価格や条件を見直すチャンスと言えます。

さらに、社内配送については、工場から店舗へ配送する設定を見直すこと。

  • 工場から店舗への配送頻度と、ルートの再設定
  • 各店への配送量の精査と、配送車の台数適正化
  • 工場からの商品出しの時間、製造開始時間の見直し
  • 配送の見直しに連動した、店舗の営業時間やシフト組みの見直し

このように、物流という視点を軸に「会社全体の流れ」をトータルで変えていく。

小口配送や過剰な配送回数といった、今まで続いている慣習を見直すことで恒久的な「物流コスト」の改善につながります。

③値上げ以外の利益改善も|「価格戦略」と「販売戦略」の見直し【取り組み事例】

特に手作りで商品製造をしている中小企業こそ、本当に「工場で製造し、店舗に配送して、陳列して販売する」という

今までの方法が本当に良いか?を考えてください。

私が支援している老舗和菓子店では商品価格を高めるために、今まで工場で手作りしていた大福を、店舗工房でお客様の注文をいただいてから、目の前で製造する提供方法に変え、商品価格を1.5倍に高め、大きく利益率を改善することができました。

これをさらに、物流という視点を組み合わせて考えれば、

  • 商品を包装や梱包したり、配送するコストが軽減する(人件費・輸送費)
  • 「手作り・出来立て」という価値を提供できるため、包装資材も簡素で良い(包材コストの軽減)

という副次的なメリットを生んでいます。

単純な値上げと捉えるのではなく。

自社が得意とする「手作り」を「お客様の目の前で手作り」という新たな提供方法へ変えていくことで、コストも抑えながら、価値や価格を高めていくことができているのです。

これこそが中小企業だからこそできる「利益改善」です。

今こそ、実行の時。

目の前に危機が来た時。あるいは危機の気配を感じた時。
多くの方は、そこで止まってしまう。一番不利益を招きます。

いざ実行をしようすれば、今度は必ず社内から「営業先への説明が難しい」「もう少し様子を見ては・・・」といった、反発が起こります。
また、経営者一人で、物流危機に対する対策をとりながら、利益改善の全てを行うには膨大な時間と労力を要します。

なぜ社長の危機感を、現場は共有してくれないのか?組織を止める「視点の違い」をこちらで解説しています。

 

私の役割は、経営者の皆様の「想いや危機感」を、現場やお客様が納得できる「数字」と「言葉」、そして「行動」へと翻訳し、具体化していくことです。

  • 商品の収益性の評価:どの商品を残して、どの商品を削っていくのか。数字、現場への負荷、経営者の商品に対する思い入れなどをトータルで把握し、その上で商品の残す商品と改廃候補を明確にします。
  • 社内の意識改革:経営者と従業員の間で、なぜ今この改革が必要なのか。自社にどんな強みと課題があって、それをどのように改善に反映させていくのか。危機意識の共有と、具体策をつなぎ、会社一丸での取り組みにしていきます。
  • 第三者の視点を持った、社内の推進役:経営者の決断のもと、会社が改善を具体的に進めていく際の推進役として、決断が鈍るときや、判断に迷う時、経営者や現場の伴走サポートを行い、改善を形にしていきます。

今、目の前に迫った危機を「困った問題、今はただ耐えるだけの問題」として傍観するだけで終わるのか。「強い利益体質の会社を作る」転換点として活かし、前に進むのか。その判断が会社の未来を決めます。

「うちの利益構造はこのままで大丈夫だろうか?」と少しでも不安を感じられたら、まずは一度ご相談ください。会社の強みを活かした、次世代の利益戦略を一緒に構築してましょう。

まとめ

危機というのは、いつ起きるかわかりません。

もしかしたら、起こらないかもしれない。

ですが、“備えた会社は強い”

これは間違いないと思います。

「恐れる・憤る」のではなく、今は「準備を進めておく」こと。

いざという時に、備えておいた分だけ会社が事業継続できる選択肢が増えます。

【筆者プロフィール】

=著者プロフィール=
経営改善コンサルタント/ミタス・パートナーズ代表
地方の小さな菓子店に生まれ、経営者である両親が売上や利益、
従業員との関係に悩みながら意思決定していく姿を間近で見て育つ。
現在は、食品製造小売業・飲食業・サービス業を中心に、
価格戦略の見直しを切り口に組織実行までを伴走し、これまでに地方の中小企業 約250社以上の利益改善を支援。
「やり方」よりも「決断し、できるようにする」を重視し、
「経営者の考えを整え、現場に通す」パートナーとして現場実行までを支える支援を行なっている。

=PR=

ミタス・パートナーズ無料経営相談お問い合わせ

Zoomで無料お悩み相談受付中。移動時間はゼロだけどちゃんと顔の見える悩み相談を承ります

keyboard_arrow_up