単なる値上げはもう限界。中小の食品企業が投資を抑えて利益を確保する3つの突破口
中小企業の利益を3倍にする経営伴走コンサルタント 本田信輔です。
- 「今までなんとか値上げを続けてきたけど、そろそろ限界を感じる」
- 「このまま値上げを続けることに不安や迷いがある」
- 「なんとなく今のままで進むことに、モヤモヤ感がある」
- 「思いつくことはやりきった。もう打つ手が考えつかない」
と相談される中小企業の経営者が増えてきました。
ここ数年、多くの中小企業が「原材料やコスト、人件費の高騰」を理由に、商品やサービスの値上げを進めてきました。
その中で、
- 物価は上がっているのに、世の中やお客さんの所得や手取りは増えていない。
- 値上げが続いていて、お客さんの“買い控え”意識が強い。
- 地方の感覚からしても、これ以上は高すぎると感じる
こう思いつつ。
“原材料やコストの高騰、人件費アップはいまだに継続していて、今後も価格を上げていかないと利益が確保できない”と考える葛藤で、最悪のケースを想定される経営者も少なくありません。
確かに長い目で見れば、所得も増えて、今よりも高い価格で売ることができる時代が来るでしょう。
中小企業の理想として「高くても買ってもらえるブランドづくり」も間違いないと思います。
でも。今の時点を考えれば、現実はかなり厳しいし、理想を実現できるまで経営が耐えられるかもわからない。
これまでは「値上げ+商品の調整・入れ替え」をしながら利益を確保しようとしてきましたが、そのやり方も限界に感じるケースが増えています。
さらに言えば。逼迫した経営環境で、目先の経営もままならないのに、未来に向けた大きな投資も厳しいという状況。
そこで今回は、
「値上げが限界だと感じたら、中小企業が投資を抑えてできる、利益を確保する3つの突破口」です。
3つに共通する大きなキーワードは「自社の適価戦略」
値上げの壁を越えた、新たな利益獲得を目指す手法として、地方の中小企業で成功事例が生まれている内容をまとめました。
目次
1.値上げの限界は「業態の限界」で起こる
実は。
値上げの限界は価格や品質ではなく、「業態(=提供のしかた)の上限」にぶつかっている場合が少なくありません。
同じ商品・同じ品質でも、
- どのように商品を提供するか?
- どのような体験を組み合わせて販売するか?
によって、「お客様が納得できる価格」は大きく変わります。
中小企業だからできる体験・体感型の販売方法に進化する
工場で製造して→出荷・配送→店頭に並べて販売する。という今までの売り方であれば、価格の上限は決まってしまいます。
なぜなら、この流れ(業態=売り方)は大手企業やスーパー、大手チェーン店の販売方法と変わらないから。変わらないから価格で比較され「価格競争」に巻き込まれてしまうのです。
大手の大量生産と、うちの商品では品質が違うと言っても、これだけ価格に厳しい時代。同じ売り方であれば消費者は価格で比較してしまうからです。
中小企業ならではの販売方法。例えば。
- お客様の目の前で職人が作る
- 店舗に併設している実演工房の活用方法を一段深め、注文をいただいてから仕上げる提供方法へ進化させる。
- 接客サービスをセルフ型やマニュアル型(大手と同じ)から、お客様一人一人への個別対応型(中小企業らしさ)を深める
などなど、商品やサービスの提供方法を進化させることができる会社であれば、「ただ買う→体験の質を高める」と強化することになり、お客様の価格に対する受け止め方を大きく変えていくことができます。
ある地域の回転寿司屋さんに家族と行った際のお話。
そのお店は、もともと地域で品質はかなり高く評され、多少値段が高くても納得と支持されていた回転寿司店。
家族で訪問した時は値上げが行われ、商品は「カウンター越しに職人さんが握ってくれるお寿司屋さん」と近い価格帯になっていました。
お客さんも海産物やお米、人件費の高騰で値上げされるというのは理解している。
ですが、店内では「回転寿司という業態(提供方法)」で受け止められる価格上限を超えてしまい、私の周りにも注文を躊躇してしまう場面や声が聞こえてきます。
品質で見れば、このお寿司の品質も一般的な回転寿司のレベルを大きく超えていて、個人の寿司店と比較しても決して劣るものではありません。値上げされた後の価格でも「職人さんが目の前で握ってくれるお寿司屋さん」であれば納得だったはずです。
ですが、値上げした価格に対して”商品の品質は納得できるが、提供方法(回転寿司として)は納得できるものではない”と強く感じた時でした。
商品の品質の問題ではなく、「販売方法・提供方法」が価格の限界を超えたという問題。
同じような問題が、飲食店に限らず地方の中小企業・小売業で起きていると感じます。
今までの販売方法や接客内容が大手企業・チェーン店と変わらないのであれば、おのずと価格上限は決まってしまいます(大手商品と価格の比較に巻き込まれる)
もちろん提供方法や販売方法を変えるとなれば、製造と販売の関係、人員配置や運用を変えていくことでもあります。
人手が足りない、従業員に気を使わないといけない。社内の体制を大きく変えること。大変だと思うかもしれません。
とはいえ、人手中心の中小企業だからこそできる提供方法や販売方法を具体化することで、価格上限を突破する段階に入っています。
このほかにも、企画力のある会社であれば、業種を加える(または変える)という方法もあります。
業種を変えるケースで比較的多いのは、小売業が飲食業(カフェ併設)などをするケースです。この場合は、今までとは違うノウハウが必要になったり、値上げとは別に利益の出し方自体が変わってくるので注意が必要です。
2.新しい販路へチャレンジする
値上げの限界を感じたら考えることの二つ目は、
「今の販路の中で値上げを続ける」のではなく、販路を広げる(変える)視点を持つことです。
自分の会社の強みを洗い出し、自社が最も利益を出せる「適価」が主戦場となっている販路を狙います。
新しい販路は、大きく2つのタイプで考えます。
①単価の上がる販路を狙う
食品業の場合、百貨店やグルメスーパーなどの高付加価値商品を求める業種など、高い価格設定の商品を前提に扱う販路の開拓を考えます。
ある程度の高単価が前提なので
- 商品設計(付加価値のある素材の活用、あまり奇抜ではない)
- ブランドイメージづくり(今の自社ブランドで良いか検討する。必要に応じてブランドづくり)
- パッケージ開発
- 高単価に相応しい値づけをすること
- 機械製造ではなく、手作りであることをあえて武器にする
など、既存商品のリニューアルや、プレミアム化をする必要はありますが、もともと“価値と価格の高い商品”を求めているバイヤーやお客様がいるので価格上限はおのずと高くなります。
【ある地方の食品メーカーが、新しい販路開拓として商談会に出た時の事例】
自社の主力商品の製造ラインの稼働率を上げるべく、新たにスーパーなどの販路に展開しようと商談会に出たある食品会社。メインのターゲットである地元スーパーや量販店のバイヤーは品質・価格ともにとても良い評価をしてくれていました。
ところがたまたま、同じ会場に来ていた百貨店のバイヤーからは「品質は良いけど、この値段だと”安すぎて”うちの売り場には置けない。もっと高い単価で売ることを考えて商品やパッケージを見直して」と指摘されました。
これをきっかけに、主力商品のプレミアム化した上位商品を開発。百貨店バイヤーの意見を取り入れた高単価商品を提案することで、全く新しい販路を作るきっかけとなっています。
気づいていただきたいのは、自分たちが想定しているよりも、高い値段の商品を求めている販路があるということ。
特に地方の中小企業が持っている、技術力・歴史・地域・限定性・希少性とのストーリーなど、強みを活かすことができる会社は「高くすると売れない」ではなく「高い価格でも買ってもらえる販路を作る」と発想を変えていくことが重要になります。
②販売量が増えて、生産性が上がる販路を狙う
もう一つの販路タイプは、観光・土産市場や地元スーパー・量販店に対する販路開拓です。
この販路。一見、安売りになって利益が減るのではないかと思われるかもしれません。
こういった量販型の販路の特徴は、商品単価の上限はあるが、「数量アップ」や「機械稼働率」が利益につながることがポイントです。
今ある機械設備(稼働率が落ちている・使いきれていない)や、数量を多く作る技術を最大限に活用できる会社が向いています。
「製造ラインの稼働率を高め、人事生産性を高めていく」ことで利益を獲得していきます。
ある地方の菓子企業では、主力商品をサイズの小型化と原材料の見直しで、価格を抑えた量販型の新商品となるように調整し、県内や隣県のスーパーに展開しました。その結果、製造ライン稼働率が改善して、製造現場の人時生産性が向上し、収益化を進めることができています。
「単価」と「量と稼働率」のバランスを重視して、利益化する取り組みです。
観光マーケットや量販店には「安い方が良い」というより「適正な価格が良い」が存在します。イメージとしては観光市場だと「お土産にふさわしい価格 500円・1000円・1200円」といった感じです。
各販路の適正価格に合わせる形で、小型化・少量化するなど価格調整した上で、品質で勝負する。
そうすることで「お土産として買いやすい価格なのに、品質は専門店並み」というポジションを獲得。
特に。機械や製造ラインはあるのに稼働率が上がっていない企業にとって、投資を抑えて、今ある設備を最大限に有効活用して新たな利益獲得につながっています。
ただし、参入にあたっては、
- 自社工場の製造ライン(機械や人員)を考慮して、増産した時に生産性が上がる商品だけを絞り込んで展開する。
- 自社ブランドを象徴するような商品を展開するかどうかは、戦略的に判断する。
- 販路(特に量販販路)によっては、既存(直販)ブランドとの棲み分けが必要かどうかを検討しておく。
ことが前提です。
会社は厳しくなっている。世の中も大きく変わっている。それなのに現場の意識だけは昔のままで「改善に動こうとする気配がない」 この原因についてはこちらで詳しく解説しています。
3.本当に値上げは限界なのか、改めて整理してみる
実際の現場を見ていると、自分たちは“もう値上げは難しい”と思っていても、250社以上の利益改善を支援してきた視点で見ると、まだまだ値上げ余力があるケースも少なくありません。
値上げが難しい・できないと諦めてしまう理由として
①自信がなくて値上げできない
自分たちの商品やサービスの価値を軽んじているケース。「自分たちはこんなもの・・・」と思っていても、お客様や現場スタッフの評価は高い。経営者だけが不安になっていえる場合です。
「長年、地域で商売を続けてきたという事実を大事にしてください」
これは私がセミナーや研修会で必ずお伝えすることです。自分たちが思っている以上にお客様はちゃんとあなたのお店や商品の価値をわかってくれている。
そのことに目を向けることも大事です。
②感覚的に捉えてしまい値上げできない
地方だから、昔と比べて、、、と感覚的に値上げできないと思っていらっしゃる経営者は多いです。よくあるのは、大手チェーン店やコンビニの商品は安いから・・・と言われるケース。
確かに安い商品はありますが、プレミアム化商品した商品で比較すると、地元中小個人店よりも高い値段で販売されているケースも少なくありません。
さらに言えば、理論的に価格を見ていくと、まだまだ値上げの余地があるケースがあります。
長年の経験や感覚を重視することは大事です。ですが事実としてみた場合、感覚とのずれがあるケースも多いです。
【関連記事】「うちはあと何%値上げできる?」客離れリスクと1年後のコスト高騰を先回りして弾き出す、菓子店・食品メーカーのための「正しい値上げ率」計算(具体例付き)はこちら
③原価率にとらわれすぎて、値上げできない
実際の商品やサービスをお客様の視点で見れば「もっと高くても良い」と思われているのに、経営者や企業側が“原価率にとらわれすぎて”値上げできないケースです。
- 「昔から、原価率は○%でと教えられてきた」
- 「この原価率が業界の常識」
といった“会社・お店側の思い込みや都合”で考えてしまう【原価率固定発想】から脱却できず、“商品やサービスの質で価格を判断する”【お客様目線の値づけ】ができないケースです。
大手企業やチェーン店、量販店であれば価格重視という傾向がありますが、中小企業の場合は“価値重視”。お客様が感じる価値に合わせて価格設定をし直すことで、値上げできるケースがあります。
逆に価格が上がったことで、“価値と価格のバランスが整い”売上が上がる事例もあります。
経営が厳しい時は、どうしてもマイナスの面に目が行きがちですが、自分の会社やお店を少し離れたところから見ること(見てもらうこと)で、感覚+理論的に考えることができ、結果として利益の取れる値上げができるようになります。
経営者と現場スタッフで認識が違い、経営者は難しいと思っていても、現場はもっと価格を上げても良いという意見が出たりすることもあります。外部の視点で見てもらうことで、売上対比5〜10%改善といった最大限の利益改善ができることも少なくありません。
値上げに反対された本当の理由。社長の決断が組織で止まる3つの原因をこちらで詳細にお伝えしています。
数字が悪いよりも、本当に怖い会社は。
今回の記事で、値上げが限界だと感じた会社が、次に取り組んでいる突破口をいくつかお伝えしてきてました。
このほかにも、個々の会社に合わせ提案してきた突破策や実例は様々あります。
ですが、
私が様々な中小企業を見ていて、「本当に怖い」と思う会社は、
財務諸表上の数字の苦しさよりも、
- 経営者が焦りや不安を感じているだけで、新しい取り組みを決断しない会社。
- 経営者の危機感を組織が共有できず、新たな取り組みに対して現場が動かない会社。
- なんとなく「うちは大丈夫・・・」という空気感がある会社。
どのパターンも共通しているのは、
「目の前の危機や不安に対して、改善の手を打てず停滞し、静かに衰亡の道を進んでいる」ということ。
これまでに上がってしまった原材料やコストの価格が下がることはない。人件費は確実に上がっていく。そう考えておく。
「うちは大丈夫」という空気感が一番危ない!危機感が組織に浸透しない本当の理由 はこちらで詳細をお伝えしています。
その上で、これからどのようにしていくかを考え、行動に移す時に来ています。
実は。どの場合も経営者が思考を整えたり、自分の役割を見直すことが動き出す第一歩。
それは「中小企業ほど、経営者が変わることで、会社が動き始め、良い循環に入ることができる」からです。
そのために、少しだけ違う視点を入れること。
これは本当に意味があります。
まとめ|社長の思い込みや既成概念が会社を止めている可能性も
厳しい環境を考えると、今の値上げは難しいと思われると感じるかもしれません。
経営者自身も厳しい状況に陥っていると、悲観的になり、焦りや孤独感から冷静な判断もできにくくなるもの。
「これ以上、値上げは難しい」という経営者の感覚は正しいと思います。
その前提に立った上で、
本当に会社を苦しくしている原因は、厳しい状況から視野が狭くなり、既成概念や固定観念にとらわれ、限界を自分たちで決めてしまっていること。
そのことが、世の中に変化に対する会社の動きを止めていることです。
視点を少し変えるだけで解決の糸口は見えてきます。
値上げが限界にきたと感じたら、次にとる手は「自社なりの適価戦略」
自社が「利益を出せる最も得意な部分を見定めて、新たな展開に挑戦する」戦略の強化を実行に移すこと。
今回お伝えした内容も、「自分たちの強み」を再構築して、その企業なりの利益構造を作ろうとした一例です。
今後、値上げを目指す目的は、
“利益を確保するための値上げ”は徐々に終了し、
“新しい可能性を作るための一つの目標としての値上げ”へと
変わりつつあるからです。
「次の時代の稼ぎ方」へ経営戦略を進化させる。
そのために。
中小企業だからこそ、自社だからこその強みを違う視点で発見し、新しい“価値の届け方・伝え方”に変えていく。
それをスタートとして、価格の壁を超えていく取り組みにチャレンジする。
まずは、自社の強みを再整理してみませんか。
それが、あなたの会社なりの【次の時代の稼ぎ方】を作り上げる第一歩です。
【あわせて読みたい】自社の強みを活かした「次の価格」を決める前に。客数を10%減らしても確実に利益が残る、失敗しない値上げ率設定の3ステップ
【著者プロフィール】
経営改善コンサルタント/ミタス・パートナーズ代表
地方の小さな菓子店に生まれ、経営者である両親が売上や利益、従業員との関係に悩みながら意思決定していく姿を間近で見て育つ。
現在は、食品製造小売業・飲食業・サービス業を中心に、価格戦略の見直しから組織実行までを伴走し、地方の中小企業 約250社以上の利益改善を支援。
「やり方」よりも「決断し、できるようにする」を重視し、「経営者の考えを整え、現場に通す」パートナーとして現場実行までを支える支援を行なっている。
「このままで良いのか」と悩む方へ。
弊社ではこれまで開業してから約400件のご相談を承り、そのうち約250件の企業・事業者さんのご支援を行ってきました。
相談を受ける方の多くは、「地方だから、中小だからやりようがない・・・」「どうしたら良いかわからない」「何をやってもうまくいかず、混乱と焦りばかり」と悩みを語られる方がほとんどです。
「うちの会社であれば、何ができるのか?」
話だけでもでも構いません。もしお困りのことがございましたら、お力になれる点があるかと思いますので、お気軽にご連絡ください。
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