菓子店・食品メーカーのための正しい値上げ率計算方法
利益アップ経営コラム

中小菓子店・食品メーカーのための「正しい値上げ率」計算方法|利益を削らないための3つのステップ

菓子店・食品メーカーのための「正しい値上げ率」計算方法|利益を削らないための3つのステップ

原材料、包装資材、電気代、人件費の高騰…。今、多くの菓子店や食品企業が「これまでの価格では利益が残せない」と悩んでいます。

「値上げしたい。でも何%上げたら良いかわからない」

この質問はとにかく多くなっています。公式オフィシャルページからのお問い合わせも増えています。

毎日一生懸命 商品を作り、お客様に届けているからこそ、価格を上げる不安や葛藤は経営者ほど強く持っています。

しかし、一番危険なのは、

  • 「周りが10%上げているから、うちも10%上げよう」
  • 「原価が30円上がったから、価格を30円上げよう」

というケース。せっかく値上げしたのに、お店や会社に利益は残りません。

この記事では、地方の中小企業250社の利益改善の支援において、私が実際に行った内容を踏まえ、なんとなくの「どんぶり値上げ」ではなく、あなたの会社やお店にとって、ちゃんと利益が残るための「正しい値上げ率の計算」についてお伝えします。

 

1.一番危険。値上げで失敗する企業の「よくある間違い」

なぜ、増えた原価分を単純に上乗せする値上げでは失敗するのか。理由は2つあります。

①原価以外のコスト上昇、製造個数減などの影響が含まれていない

今は、原価以外のコストも高騰しています。
さらに、値上げや人口減による客数減や販売数量減の影響も計算に含む必要があります。

  • 人件費の引き上げ
  • 水光熱費(電気代・ガス代等)の高騰
  • 配送費(物流コスト)の上昇
  • 廃棄ロスの発生
  • 製造における小ロット化による効率低下

これらを無視して、「原材料の上がった分」だけをスライドさせて価格に反映させても、他のコストに飲み込まれて利益が消えてしまいます。

 

②値上げの頻度が多く、会社も顧客も疲弊する

もしも増えた原価分だけを価格転嫁していこうとすると、原価が上がるたびに値上げをしなくてはいけなくなります。しかも今は、半年単位で何かしらの原価が上昇する時代。

その度に値上げを繰り返すたびに、何が起きるか・・・。それは、

「お客様の視点が、商品の『価値』よりも、商品の『価格が上がったこと』に向いてしまう」

言い換えると「この商品は美味しそうと思う前に、この商品、また値段が上がった」
ということがおきます。

中小企業は商品やサービスの価値で勝負をしたいのに、お客様は値上げされた価格ばかりを意識するようになり、値上げのたびに離れていく。

「値上げの回数だけ、経営者は不安を抱え、社内は疲弊し、その上で顧客は離れていく」という負のスパイラルに落ち込みます。

そうならないためには、値上げの頻度はできるだけ少なくすること。
つまり、将来予測される原材料やコストの上昇分、将来への投資(スタッフの処遇改善や設備投資など)に必要なコストも先回りして想定し、一度で決めていく必要があるのです。

 

2.【実践】菓子店・食品企業が行う「ちゃんと利益は残る値上げ率設定」3つのステップ

では、実際にどのように値上げ率計算をしていくのか良いか、3つのステップで解説します。

ステップ1:現在の「本当の原価と粗利益」を最新にする

まずは直近の仕入れ価格をもとに、原価計算を行います。
これ意外とできていない会社、多いです(苦笑)仕入れ値が半年前、一年前、さらには商品を開発した当時から変わっていなというケースもあります。

すべての商品の原価計算を行うのが大変なときは、主力商品の「最新原価」から計算してください。

古いデータで計算してしまうと、その時点で数%の誤差が生まれてしまい、せっかく値上げしても利益が出ない原因になります。

 

ステップ2:将来の見通し分も入れて考える

値上げを考える時は、今の原価やコストだけで計算しないことです。
将来の見通しとして、次の2つの要素をあらかじめ織り込みます。

  • コストの将来予測

原材料はさらに上がるのか、人件費の上昇分、それ以外のコストの上昇分。
原材料やコストの一年後を想定して、値上げ率を考えること。

  • 販売数量(製造個数)の減少リスク

値上げや人口減少等による販売数量(製造個数)の減少分です。
売上個数が減ることや、製造の機械効率が下がることも想定しておきます。
値上げしても、今までと同じように買っていただける。確かにこれが理想です。
ですが、経営においてはリスクも考えておかないといけない。
私がご支援している場合は、値上げによって最大10%の販売数量減をリスクとして想定し、値づけを行なっています。

大手企業は1年間に何回も値上げをしていますが、中小企業にとって、値上げは精神的にも労力的にも負担は大きいものです。
さらに言えば。
お客様も「値上げをするたびに、商品の価値よりも、価格が気になる」というマイナス意識(客離れにつながる)が生まれます。

原則として、値上げの頻度はできるだけ少ない方が良い。
そのためには、1年後でも利益が出せることを考慮して値上げ率を設定する必要があります。

 

ステップ3:「いくら上げるか」の前に、「いくら残すか」を逆算する

「このケーキ30円上げよう」とか、「この商品の原価率は25%だから、この原価率になるように上げよう」からスタートしないことです。
特に気をつけて欲しいのは、原価率を固定して値づけ(値上げ)する発想。
「昔からうちは原価率は30%と決まっている」
そういう経営者や職人の方は少なくありません。
確かに、以前の利益構造であれば、利益が出たでしょう。
ですが、菓子業も食品メーカーも、今の時代、人件費も、それ以外のコストも上がっている。
その時点で、原価率30%という固定発想から脱却する必要があるのです。

大事なのは、「会社を維持し、スタッフを守り、次の投資を踏まえた時、年間でどれだけの粗利益が必要か」というところです。

【簡単なシミュレーション】

現状:売価400円(原価160円/粗利240円)で、月1,000個販売
=粗利益240,000円

原価が180円に上がったため値上げをしたいと考えます。
半年〜1年後に原価はもっと上がっているかもしれないリスクを考慮し、さらに販売個数が10%減になったとしても、現在の利益(24万円+α)を残すための計算式は以下のとおりです。

項目 想定する数字 計算の根拠
① 1年後の想定原価 198円 現在の原価180円 × 110%(将来のコスト高騰分)
② 想定販売数量 900個 現状1,000個 × 90%(10%の客離れリスク)
③ 確保したい総粗利益 240,000円+α 会社を維持・成長させるために必要な利益額

これを逆算すると、
1個あたりの必要な粗利益は260〜270円(240,000÷900個)

値上げ後の売価198円(原価)+(260円〜270円)=458〜468円

値上げ率:15%〜17%
と理論的に計算することができます。

 

3.値上げで失敗しない、7つのコツ|売上アップと利益倍増を実現する

値上げて失敗しないための詳しいポイントについては、以前に書いたこちらのブログ記事もあわせてお読みください。

①値上げは値決め。先に売りたい値段・価格を決める

値上げをする時、どうしても「今の商品・サービス」を前提に価格を決めようとします。
ですが、売りたい価格を先に決めると、今と同じ商品・サービスではダメだと気づきます。
そこが重要です。

値段を先に決めて、その値段でもお客様が買いたいと思うように考えていく。
これは、社内に対しても「値上げした価格に見合った価値を提供する」という意思表示につながり、全社一丸で値上げに取り組む体制づくりにつながります。

②お客さんを決める。再定義する

値上げをすると、必ず「高くなった」「他の店が安い」という方が一定数います。

ここは経営者が判断をすることですが、こういうお客様が本当にうちの会社のお客さんなのか。
商品やサービスを価値ではなく、価格で判断する。
乱暴な言い方になりますが、こういったお客様に見切りをつけ、自分たちの商品やサービスの価値を伝え直しながら、新たなお客さんを増やし「今以上の満足をしてもらうように、価値を高めていく」と軸足を決める方が良い結果につながります。

③今の商品やサービスの価値を、お客さんにちゃんと伝え直す

10年以上、中小企業や一次産業の値づけ・値上げをお手伝いしてきた経験から言うと、
「ご相談を受けた会社や経営者で、高すぎる値づけをしている方にお会いしたことはありません」

ほとんどの経営者、そしてその会社の従業員さんたちは、自分たちの商品やサービスの価値を低く見積もっている。だから、お客さんに本当の価値を伝えきれていない。
ここを意識して、お客様に価値を伝え直す。
時に、外部の視点も大事です。

もう一度、価値を売り場やセールストークで伝え直してみる。
それだけで、今ある商品の価値は上がります。

実際、こうした取り組みで、大きな値上げに成功したケースがほとんどです。

④「価格」よりもお客さんの「予算」を意識する

値上げをしようとする時、「○○円も上げるの?」と驚かれる場合があります。
経営者や従業員からしてみると、大きな値上げに感じるのでしょう。
ですが、お客様から見たら、値上げしても、それほど変わらないと感じるケースがあります。

そのキーワードとなるのは、「価格」とお客さんの「予算」と違い。
お客さんは買い物をするときに、予算を気にします。
例えば
「旅行のお土産を買うなら、大体一人1,000円くらい」
これがお客さんの予算です。
ですが、実際に1,000円ジャストの商品などはありませんから、ほとんどは「予算内」でと言うことになります。
大事なのは、この予算内という幅。
下の価格はいくらまで。上の価格はいくらまで。予算の許容幅に収まっていれば問題はありません。
1,000円くらいでと考えると、お客さんには800〜1,200円くらいの予算許容幅がありますから、この中で値上げが収まっていれば、割高感をお客様が感じることはありません。

多くの会社では、自分たちの都合だけで価格を決めようとします。
ですが、そこにお客様の視点が入ると、価格の見え方は大きく変わります。
これを活かして、値上げをすると想定以上の値上げでも問題ありません。

⑤高い値段の商品を投入する。値上げと同時に安い商品を入れるのはダメ

値上げの影響を抑える有効な方法の一つが、高い値段の商品を投入すること。
今の商品よりもワンランク上位の商品の同時投入です。

よく
「値上げすると、割安感の商品がなくなるから、補填として安い商品を投入する」
される方がいますが、これは逆効果です。

新たに安い商品が投入されることで、値上げした既存商品の割高感が強調されるためです。
逆に、値上げと同時に今よりも高い商品を導入すると、既存商品との比較で値上げの割高感が軽減できます。

オススメしているのは、主力商品のプレミアム化。
これによって、売上や客単価アップ。商品の売上が180%と大きく伸びた事例も生まれています。

⑥日々の当たり前のレベルを上げることが、値上げのクレームを減らす

値上げする時は、価値の向上も考えていく。
商品だけではなく、サービスや日頃の行動なども高めていくこと。

特に大事なのは、整理整頓や掃除のレベル。
実を言うと、値上げした時に発生するクレームの9割以上は値上げや価格そのものに関することではありません

「掃除や整理整頓が行き届いていなかった」
「言葉遣いが悪かった。スタッフの服装が汚かった」
こういった、クレームが圧倒的です。

お客様はあなたの会社の商品の良さをわかってくれている、
でも、値上げした分の何かを求めている。
その捌け口となるのが、掃除や整理整頓。身だしなみ・立ち居振る舞いといったところに出ます。

「日々の当たり前のレベルを、値上げをきっかけに一段階 高める」
これは私が、値上げをする会社全てにお伝えしていることです。

⑦値上げの上限目安は20%。小さな値上げを繰り返さない。

値上げへの不安。それはお客さんが離れてしまうこと。
これは多くの経営者が持つ不安です。

問題は、値上げでどれだけ客離れが起こるのか。
これまで250社の利益改善に携わり、幅広い業種で値上げのお手伝いをしてきた実測データから言うと。

「値上げ率20%までの、顧客流出率は一定です。
それは5%の値上げでも、20%の値上げでも変わりません」

ただし、怖いのは値上げをするたびに、一定割合の顧客が流出するという点。
つまり、小さな値上げを繰り返すたびに、顧客流出の可能性がつきまとうのです。

だからこそ、値上げをする時は将来を見て、きっちりと1回で上げる。
その上で、できる限り値上げの頻度を減らしていく。

これは鉄則です。

 

4. 菓子店・食品企業特有の注意点

数字の計算と同じくらい大切なのが、お客様との信頼関係。
伝え方はとても大事です。
そのポイントは

  • 全商品一律ではなく、メリハリをつけた値上げ
    毎日買ってもらう普段使いの定番商品値上げ率を抑える。ギフトや季節限定商品などの「価値」が重視される商品の値上げ率は高めに設定。商品ごとの自身や、自社でのポジションなども考慮して、商品ごとのメリハリをつけることがお客様への心理的負担を軽減します。

 

  • 嘘をつかない。ステルス値上げは厳禁
    お客様が知らないうちに量を減らす(ステルス値上げ)や、「お客様へ前触れなし」の突然値上げは不満が溜まります。値上げの理由は原材料高騰だけではありません、従業員の給与を上げることも要因のはず。そういったことを誠実に価格改定のお知らせへ記載して伝えることです。大事なのは「値上げした分、商品のおいしさや価値を高めていく」と、経営者の言葉として伝える方が、結果として根強いファンに支持され続けます。

 

  • 「謝らない値上げ」を意識する
    値上げをしようとすると、どうしても「申し訳ない」と言う気持ちが言葉が出てきます。
    現場でも、「値上げして、ごめんなさい」とお客様に言うスタッフもいるでしょう。
    ですが、その言葉を言い続けることで「値上げ=悪」のイメージが無意識に植え付けられてしまう。
    これは企業側もお客様も気をつけないといけない点です。
    私はご支援先で値上げをする際に社内に向けて「謝らないでください」とお伝えします。
    「謝るのではなく、値上げした分、価値を高めていくこと」を伝えてくださいと。
    値上げが悪いのではなく、価値を高めていかないところへ意識を向ける。
    今後も、値上げは続くことが予測されています。
    そういう時代からこそ、自分たちの値上げに対する意識や言葉を変えていく。
    これ、とても大切です。

 

まとめ

値上げを決断することは、経営者にとって本当に身を削られるような思いがするものです。
私もこれまで多くの現場に立ち会ってきましたが、価格改定に対する家族や現場からの反対。売上や利益に対する不安。その中でなんとかしようとする経営者の方々の表情はなんともいえないものです。

しかし、値上げは決して悪いものでも、お客様への裏切りでもありません。
あなたの会社やお店の技術や品質を守り、地域やファンに支持され続けるために、そしてスタッフや家族の生活を守るための決断です。

経営者一人が数字を睨みつけるのではなく、共に考えていく。それが私のスタンスです。
まずは、自社の「本当の数字」を出してみる。一つの商品の値上げを考えてみる。
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