消費税減税はチャンスか危機か?地方の中小菓子店が今から準備すべき4つの経営課題とは
食料品の消費税減税(税率の引き下げ)という政府方針が現実味を帯びてくる中、地方の中小菓子店やスイーツショップをはじめとした食料品製造小売業にとって、この局面は非常に難しい経営判断を迫られる節目となると考えています。
世の中では減税に伴う、
- 物販とイートインの違いによる税制の複雑さ
- システムやPOSレジの改修対応について
- 飲食店への影響分析
の内容や情報が多く見受けられますが、本当にこのような「減税対応」で済むのでしょうか。
仮に来年4月から消費税率が引き下げられた場合、お客様は「減税されたのだから、お菓子や食料品は安くなる」という期待を持っています。
ですが実際には、和洋菓子に限らず、今の菓子企業やお店の経営状況は、長引く原材料や包装資材、電気・ガス・物流費、人件費の高騰ですでに限界を迎えています。
そのため「食料品の消費税は下がったのに、なぜお菓子の値段は下がらないの?」
という事態が想定されます。
世の中の、食料品の消費税減税による期待は大きいものです。話題性もあります。
それだけに期待が覆された時の失望も大きいものでしょう。その矛先は政治に向かうと思いますが、売上や集客の影響を受けるのは企業側。特に中小企業にとっては、影響が大きいものと考えています。
今回は、中小菓子店をはじめとした食品製造小売業にとって、存続と利益確保のために今から取り組むべき経営課題について、整理しました。
目次
1.減税によるキャッシュフロー悪化に対する対策。お客様からの消費税は減るが、業者へ払う消費税は減らない?
最も気をつけないといけないと考えているのは、「販売時の消費税は下がるが、仕入れや経費の消費税は下がらない」ということによる資金繰りへの影響です。
今回の食料品の消費税率低減の前提として、
- 経費の多くは減税されない:包装資材(パッケージ等)、設備の修繕費、店舗の家賃、電気・ガス代、販促費などの経費は、食料品ではないため税率は変わりません。
- お客様からいただく消費税(売上にかかる預かり金)が減る一方で、仕入れや経費で業者に支払う消費税率はそのままのため、会社やお店が実質的に負担するコスト(控除しきれない仕入れの消費税や、還付される消費税が入金されるまでのタイムラグ)が発生し、一時的にキャッシュフローを圧迫するリスクがあります。
イメージとしては、
【現状:食料品の消費税8%】
売上100万円、税率8%
→消費税は8万円
【食料品の新・消費税が1%になったら】
売上100万円、税率1%
→消費税は1万円
毎月7万円、預かり消費税が減る。
一方、
【食料品以外の消費税は変わらない】
経費50万円、税率10%
→消費税は5万円
このシミュレーションだと、一時的に4万円のキャッシュが減ることになります。
売上にかかる消費税(預かり金)は激減するのに、包装資材や光熱費、そのほかの費用にかかる消費税は10%のまま。差し引きで一時的にマイナスになります。国からの還付を受けるまでの数ヶ月間、会社やお店のキャッシュは毎月数十万円〜数百万円単位で不足することが想定されます。

ただでさえ厳しい経営環境下でキャッシュフローが厳しい状態。
顧問税理士や会計事務所とも連携をとり、減税が実行された場合のシミュレーションをしておくことが大事です。
コロナ期の借入返済などが始まっている会社もあり、年間で数百万円単位のキャッシュが短期的に不足する可能性があります。手持ち現金を増やしておくことや、金融機関との事前協議の中で融資枠を確保しておくなどの対策が必要。
キャッシュフロー強化のために融資を受ければ。その手間や利息分はさらなるコストとなり、経営をさらに厳しくする可能性もあります。
2.「なぜ、消費税減税と同時」では遅いのか?「便乗値上げ」ムードに流されない「先行価格改定」を年内に行う理由
なぜ「減税と同時」ではなく、「今のうち」なのか?
減税が実施される時期。その前から間違いなくテレビやネットニュースでは連日「食料品の値段が下がる?」「街の反応は?」と報道され、日本中の消費者が食料品の価格に意識が向かってしまいます。もちろん、自分たちのお客様も同じです。
もしも、このタイミングに消費税分の値上げをしたとしたら・・・。
「価格」に敏感になっている時期。少しの値上げ(据え置き)でも、お客様に「便乗値上げ」とマイナスに捉えられてしまう可能性が高くなります。
だからこそ、「今のうち=年内」の値上げが大事になります。
昨今の原材料・エネルギー・人件費の高騰は、すでに消費者も日々の生活で感じています。
「減税」という政治的なイベントを理由にするのではなく、「今、現実に起きているコスト高騰分を吸収し、お菓子の品質を維持していくため」という理由が、お客様にとっての納得感につながります。
①できるだけ、値上げや価格改定は年内に済ませておくこと。
活論から言うと、「年内に本体価格の改定を済ませておくことで、4月の減税時に『税込価格をそのまま下げる』だけではなく、『税込価格を据え置き、下がった分の税率をそのまま本体価格の利益にスライドさせる』という二つの選択肢から選ぶことができる」から。
お客様の支払額は変わらないため、リスクを最小限に抑えた利益確保の取り組みになります。
その上で、お店側は「税率が下がった分、税込価格を下げる(もしくは据え置く)」の体制をとることができ、レジシステムやプライスカードの変更といった対応に専念することができます。
周りの店が「据え置きか?値上げか?」と迷い、「便乗値上げ」と批判されないように取り組んでいる中、自店は「減税分は税込価格から下げてお買い求めしやすくなりました」と還元できる姿勢を見せることすら可能になります。
値上げの流れとしては、
STEP1:秋のイベントで「新しい高単価商品」の投入をする
既存の定番商品をいきなり値上げするのではなく、秋の素材やイベントを活用して、季節限定商品やイベント商品を今までよりも、少し高単価にして投入します。
栗やブランドのさつまいもなど、秋冬については、菓子業界でも単価の取りやすい素材が多くあります。この段階で「少し高くても、美味しいから買う」というお客様の心理的ハードルや、少し高い価格への心理的ハードルを下げておくことです。
また、この取り組みは社内に対しても、値上げへの反発や抵抗を抑える効果があります。
「うちの商品は、高くてもちゃんとお客様が評価して、買ってくれる」という意識をつけることです。
特に日々の売上や集客を感じている現場ほど、値上げに対する不安感は大きいものです。
実際に、ある老舗和菓子店では、全商品の値上げを行う前に、「催事(イベント)での値上げ」を実施。これまでの「値引き・お得商品」中心の催事ではなく、一部の商品を限定のプレミアム商品や、高単価の企画商品を投入しました。
催事の結果、売上・収益共に前年を上回る結果となり、経営者も現場も
「自分たちの菓子づくりの技術や、価値をちゃんと伝えれば、お客様は高くても買ってもらえる」と実感となり、その後の全商品の価格改定、商品構成の見直しへとつながりました。
全商品が値上げされた後も、客離れは少なく、利益は1年で数千万以上の改善。
販売現場でも、自信を持って商品をオススメすることができ、社内の空気も大きく変化させることにもつながりました。
価格改定で一番大変なのは、競合でも、お客様が離れることでもありません。現場のスタッフが「高くなってしまって・・・」と販売への意欲を萎縮させてしまうことです。だからこそ、秋のイベントでの成功体験が重要になります。社内に「私たちの価値を、ちゃんとお客様はわかってくれている」という実感をつけることが不可欠なのです。
STEP2:11月〜12月頭までに全商品の価格改定と「定番商品のリニューアル」
クリスマスや年末年始など、菓子業の需要期の前のタイミングで、主力商品や定番商品の価格改定と、一部商品のリニューアルを行います。
適正な値づけ率の計算や、値上げの方法・注意点については、下記のブログ記事で詳しく書いていますので、ぜひお読みください。
「自社は何パーセントの値上げが適切なのか?客数が落ちても利益は残るか?」具体的な正しい計算式とシミュレーションについて。実際の支援事例も交えて詳しく解説しています。
②「値上げして売れない商品」は売り方を変える。中小企業にとって包装資材高騰はピンチにもチャンスにもなる
値上げが難しいと感じるのであれば、商品リニューアルや、自分たちの強みを活かした新しい販売方法への取り組みを。
値上げをしようとすると、商品の中には「これは値上げに耐えられない」と感じてしまう商品が出てきます。そういった商品についてはスクラップ(廃番)&リニューアルの判断をします。
そのほかにも、今高騰している包装資材を低減して販売する方法も考えてください。
中小菓子店の場合、店舗に工場が併設していたり、店内工房があるケースも少なくありません。
お客様へ「出来立てのお菓子」を提供するために、複数の包装資材が必要でしょうか?
シンプルに。紙や袋に入れて販売する方が、「出来立て感」を感じてもらうことができますし、もしも工場の菓子職人がいるのであれば、注文をいただいてから商品の仕上げをして提供する販売方法とすることで、商品単価の向上、大手企業やチェーン店では真似できない、中小企業ならでは価値を提供することができます。
お客様も、包装資材が上がっていることはテレビやネットニュースですでに知っています。
それだからこそ、包装資材分の値上げがされるのであれば、自分たちが協力する(包装資材を不要と考えるなど)ことで、価格を抑える協力をしてもらえる時代に入っています。
先ほどお伝えした、老舗和菓子店では、価格改定と合わせて、お客様から注文をいただいた後に、大福を店内工房で包むという販売方法を導入しました。
催事の際に、イベント企画としてテスト販売した方法が、とても評判が良かったからです。
自社の強みである、菓子の職人がいることを活かした新たな販売方法で、大福の値段は1.5倍以上になって、さらに売上個数が伸びるという結果になりました。
3.POSレジの改修よりも大事になる「価格説明力(納得感)」を強化する
多くの会社は、レジやプライスカード、POS改修に意識が向かいます。
ですが、それ以上に大切なのは、「なぜ、この価格なのか」を説明できるかです。
改めて、自分たちの強みを整理し、お客様へ発信すること。
- 原材料に対するこだわり
- 職人の技術や、素材の目利きの力
- 地域生産者との連携
- 鮮度
- 人だからこそできるサービス
- 品質や機能
などを、社内で共有し、文字・画像・動画、そして販売方法でお客様に実感していただくことです。
価格に対してこれだけ意識が向かう時代からこそ、中小企業は価格訴求よりも「納得感」をどう感じてもらうかがさらに大事になってきます。
4.減税後に売れるのは「家で楽しむ」と「贈る」需要。物販優位を活かしてギフト・土産強化
食品物販(減税対象)とイートインや飲食(税率10%)の税率差の心理的影響はかなり強く。お客様は行動は「物販・テイクアウト(おうちで楽しむ、大切なひとに贈る)」へシフトすることが予想されます。
飲食・カフェスペースを持つ店舗や企業は「なぜ、高い値段を出して店内で食べるのか」を追求しなければ、売上を大きく落とすことになります。
ただでさえ、光熱費や人件費がかかる飲食・カフェ部門。場合によっては、縮小・廃止することで、物販に特化させる決断が必要になります。
その上で、地域密着型菓子店としての強みを活かすのであれば「日常の贅沢」と「ギフト・土産品」の強化が必要です。
「日常使い・おやつマーケット」の領域で戦おうとすると、大手チェーン店やコンビニ・量販店との価格競争に巻き込まれます。地方の中小菓子店として生き残るためには、「せっかく消費税が下がったのだから、いつもより少し良いお菓子を、あの人に贈ろう」「家族みんなで少し贅沢な時間を過ごそう」と思わせる商品づくりや、ブランド力をつけていく必要があります。
当たり前のことですが、店内外の清掃や整理整頓、スタッフの身だしなみもブランドを作る重要な要素ですので、これを機に見直すことをオススメしています。
まとめ:一時的な対応ではなく、5年・10年続く利益体質へ
地方の菓子店にとって、食品の消費税減税という変化は、一時的な税の変更に見えます。
ですが、本質的には「あなたのお店は、これからも適正な価格で商品を買ってもらえる価値を提供しているか」ということが問われる機会です。
価格を上げる・下げるだけの話ではありません。
「政治や消費者の減税ムードに流されて、利益を削るのか」、「自分たちの価値を再定義して、5年・10年続く利益体質に生まれ変わるか」
中小菓子店・スイーツショップにとって経営戦略の大きな分岐点になります。
「4月の減税」に対応するだけではなく、5年、10年先も残る利益体質をつくりませんか?
私は、ただ机の上でノウハウを語る「先生」ではありません。クライアントの可能性を誰よりも信じ、経営者さまと同じ目標に向かって泥臭く一緒に走り続ける「パートナー」です。
「うちの商品の場合、年内にどう価格改定を進めればいいか?」「現場スタッフに負担をかけずに価値を伝えるには?」と一歩を踏み出しかねている方へ。まずは一度、お話を聞かせてください。あなたの会社の未来を、一緒に形にしていきましょう。
























