なぜ改善したのに会社は変わらないのか|中小企業に起きる「3つの詰まり」と負の連鎖の理由
「社員の意識を変えようと、研修を入れたり、社外のセミナーにも参加させた」
「新しいI Tツールを導入して、コミュニケーションや効率化を進めようとした」
「コンサルタントを入れて、評価制度を新しく刷新した」
それなのに、会社が変わらない。現場の空気も重いままで、思ったような成果が出てこない。
「これだけ手間もお金もかけたのに、、、」と、モヤモヤを抱えていませんか?
多くの中小企業を見てきた私から言うと、改善の「部分最適」に陥っている状態。
どこかを直しても、違うところに課題が出てくる。モグラ叩きのようなイメージです。
これまでに解説してきた「視点」「責任」「安心」の3つの要素は、決してバラバラに存在しているわけではありません。これらは繋がっていて、どこか1箇所に課題があれば、組織全体の動きや改善の流れを止めてしまう、「負の連鎖」を起こしてしまいます。
まだ、読んでいない方は先にこちらをご覧ください
「みんなで決めよう」が改善も値上げも止めてしまう。「責任の詰まり」の正体
「うちは大丈夫」が一番危ない。静かに会社が衰退する「安心の詰まり」の正体
今回は、なぜ個別の改善が成果につながらないのか、その「構造的な原因」を実例とともに解き明かします。
目次
1.「対処療法」が組織を疲弊させる
中小企業ほど、経営者が現場の問題を一つ、解決しようと動くほど、実は組織の柔軟性は失われてしまいます。
例えば。売上を上げようと、社長が新しい営業手法を導入したとします。しかし、現場に「失敗したら、会議で詰められる」という「安心の詰まり」があれば、社員は新しい手法に挑戦せず、今までのやり方を守ろうとします。
その結果、新しい営業手法は形骸化し、売上は上がらない。社長は「なぜ、言った通りにやらないんだ」と、さらに現場との溝が広がってしまう。
これが、目にみえる事象だけを追いかけ、根本的な課題を見ない「対処療法」の限界です。
2.【事例】「うちの会社は、工場が改善すれば利益が出る」で失敗した事例
私が実際にご支援した、ある菓子製造販売会社の事例をお話します。
初めて訪問した際。会社は赤字状態。社長が開口一番に放った言葉はこうでした。
「うちの工場には無駄が多い。工場が改善すれば利益が出るはずだ」
実際に工場を見ると確かに無駄は多い。改善の余地もたくさんある。
「製造現場を直せば利益は出る」。私と社長の改善方針は一致していました。
しかし、その帰り際。製造現場のリーダーから言われた一言。
「本田さん、うちの工場はまた改善ですか?」
その時は「そうです。一緒によろしくお願いします」と返答しました。
あとで振り返れば、私はその言葉の重要性を理解していなかったのだと思います。
その後、実際に工場の改善を進めていきました。
実際の製造工程の見直し、リーダーや社員に対する生産性の社内研修など。実地と座学の両面で改善を進めましたが、改善が計画通りに進まない。
今、目の前に見えている無駄が改善できない。他社で成果を上げている手法を導入しても現場が動かないのです。
焦る私は、ある先輩経営者に相談をしました。
その時に問いかけられた一言が、
「その会社の社長は何してるの? 社長がやるべきことをやっている?」
実は。この会社は以前にも何回か別のコンサルタント会社が入り、工場の改善を進めようとしても、毎回うまくいかなかった経緯があったのです。
改めて製造現場のリーダーに話を聞くと、本音が漏れました。
「社長は、改善の専門家を連れてきて、『あとは現場を改善して』してくれと言うだけ。結局は赤字の責任を現場に押し付けてるだけじゃないですか」
社長とすれば「専門家を探し、お金を出して支援を依頼する」ことが役割と思っていたのに、現場はそう思っていない。
現場は「社長こそが向き合うべき課題から逃げている」と思っている。
ここが大きな課題だったのです。
組織が変わる鍵は「社長の責任」の見せ方だった
私はすぐに、社長へ製造現場の改善をストップし、社長へ「商品価格の見直しによる改善」への方針転換を提案しました。
長年の卸先との調整や、パッケージの変更等などを社長自らが矢面に立って、取り組んだ価格戦略の見直しの結果、会社は黒字へ転換。
そのあと、製造現場の改善が大きく動き出し。現場からも自発的な改善の意見が出てくるようになったのです。
後から聞けば、現場は「長年取引している卸先との交渉はすごく大変だったと思う。それでも価格を変えて、社長の本気が知れた」
これで、「自分たちも動かないといけない」
と感じたとのこと。
結果、価格戦略の改善と、現場改善の両方が効果をあげ、大きな黒字へ転換。
この会社は金融機関からも融資をお願いされるようになり、新しいチャレンジにも積極的に取り組める財務基盤と、動ける組織ができています。
社長の視点は、「現場の課題」だったが、現場の視点は「社長の本気」だった。
社長と現場の「視点のズレ」で、組織は動かなくなる。視点を揃える翻訳術
社長の責任は「現場に、改善の専門家を入れる」だったが、現場の責任は「社長が自ら変わること」を求めていた。
社長が負う責任と、現場が負う責任のズレ。会議で決めたことが進まない、改善が止まってしまう理由を解説
まさに経営者の行動一つでが「詰まり」が解消され、組織が自走し始めた瞬間でした。
3.中小企業で「3つの詰まり」が引き起こす負のスパイラル
組織が動かなくなる時、そこにはかならず「負の連鎖」が起こっています。あなたの会社で、以下のような悪循環は起きていませんか?
①視点の詰まり → 責任の詰まり
経営者は「3年後、5年後、10年後」を見ているのに、現場は「今日と明日」のことしか見ていない(視点の詰まり)。この状態では、経営者から求められることに対して、現場は「自分たちが何をすべきなのか・本当にやるべきことなのか」がわかりません。結果として、誰もリスクを取ろうとせず、指示待ちの状態「責任の詰まり」が発生します。
②責任の詰まり → 安心の詰まり
経営者が負うべきリスクを取らないのに、現場にだけ、結果(責任)だけを求めるようになると、現場は「失敗=悪」と言う空気感が強くなり、時に反発心が生まれます。これが心理的な安心を奪い、「安心の詰まり」を引き起こします。
③安心の詰まり → 視点の詰まり
明日仕事がなくなるかもしれない。あるいは叱責されるかもしれないと不安や怯えを持ってしまうと、中長期的な視点を持つ余裕はなくなります。生存本能として視野が極端に狭くなり、再び「視点の詰まり」に戻ってしまう。
「詰まり」は独立した点ではなく、線として、面として、一つの円(ループ)になっています。
4.経営者の仕事は「結び目」を見つけること。
改善しても会社が変わらない、改善自体が進まない最大の理由は、「一番細くなっているボトルネック」を放置したまま、他の場所を広げようとしているからです。
- どれだけ高いビジョン(視点)を掲げ、間違いない手法を持ち込んでも、現場が怯え(安心の欠如)いれば、響かないし、動かない。
- どれだけ心理的安全性(安心)を高めても、役割(責任)が曖昧だったり、納得性がないと、組織はただの仲良しクラブになってしまう。
経営者がすることは、個別の実務に指示をしたり、改善することではありません。
この「視点・責任・安心」の連鎖の中で、今どこが結び目となって全体の流れを止めているかを見極めることです。
もしも、自社の状況を深く整理したい場合は、以下の記事も読むことで理解が一気に深まります。
「みんなで決めよう」が改善も値上げも止めてしまう。「責任の詰まり」の正体
「うちは大丈夫」が一番危ない。静かに会社が衰退する「安心の詰まり」の正体
まとめ:点ではなく「線・面」で経営を診る
「会社を変える・改善を動かす」とは、方法や制度を入れることではなく、組織に流れる血流を正常に戻すことが大事です。
- 視点:どこに向かうのか、経営者と現場は何を見ているのか
- 責任:誰が責任を負い、どこまでを委ねるのか
- 安心:失敗を許容し、挑戦を支える社風になっているか
この3つが線として繋がった時、組織は経営者が細かく指示を出さずとも、自立自走して動き始めます。
もし、あなたが「これだけやっているのに」と感じているなら、一度立ち止まって、自分の会社を診てください。
「自分がやろうとしている手立ては、連鎖のどこを繋ごうとしているか?」
その答えの中に、組織が劇的に変わる突破口が隠されています。
【著者プロフィール】
経営改善コンサルタント/ミタス・パートナーズ代表
地方の小さな菓子店に生まれ、経営者である両親が売上や利益、従業員との関係に悩みながら意思決定していく姿を間近で見て育つ。
「やり方」よりも「決断し、できるようにする」を重視し、食品製造小売業・飲食業・サービス業を中心に、価格戦略の見直しを切り口としながら、「経営者の決断を整え、組織実行までを支える伴走支援」を行なっている。これまでに地方にある中小企業250社以上の動ける組織づくりと利益3倍化を支援を行う。
「どこが詰まっているかわからない」
そんな場合は、一度外から整理することで、
改善の優先順位が明確になります。
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