中小企業の利益を3倍にする経営コンサルタント本田信輔です。
10年間で100社以上。業種を問わず、経営コンサルタントとして多くの中小企業のコスト削減をしてきた私ですが、ここ数年。この方法をとることが極端に減ってきました。
無駄な経費カット、人件費の効率化、作業工程の見直し、評価制度によるリーダークラスの数値管理能力アップ、改善目標の設定。赤字に苦しむ企業にとって効率化。生産性の改善は大きなテーマです。
無駄な経費・コストを削減すること。これは企業経営にとって非常に大事なことと思います。
ですが当たり前のように、無批判的にコスト削減をする。とにかく経費を抑えるといった方法が中小企業の力をマイナスにしてしまう事象が生まれています。
そのことに一部の経営者は気付きはじめています。私も相談に来られた経営者の方にお伝えすることも増えました。
大企業ならまだしも。中小企業のコスト削減が売上・利益・人材・ブランド。そして何よりも今まで頑張ってきた経営者や従業員の努力やプライドまで失わせてしまう現状を見ることも増えています。
今回は中小企業のコスト削減が限界を超え、「これ以上コスト削減をやってはいけない」と判断できるNG事象を、10年間100社以上のコスト削減を行なってきた経営コンサルタントの視点で紹介します。
目次
- 1.経営者がすでに諦めている。色々なコンサルタントが入っても成果が出ない。
- 2.利益が出ているのに、従業員の雰囲気が重い、暗い、喜んでいない。
- 3.今以上のコスト削減が会社の運営自体を脅かす状態になっている。
- 4.優秀な人材、間違いなく自社で働き続けてくれると思った人材が辞めると言い出した。
- 5.いつになったら成果が出るのか?ゴールが見えない。
- 6.本来無駄ではないコストや経費が、無駄と判断されるようになった
- 7.新しい商品やサービスが現場から上がってこなくなり、焼き回しの企画が増える
- 8.コスト削減が進んでいるのに財務状況が改善せず、外部機関からさらなる改善を求められる
- 9.従業員のモラルが低下、崩れてきたと感じる。当たり前にできていたことでミスが連発する
- 10.気合いと根性論が中心のコスト削減になったら終わり。
1.経営者がすでに諦めている。色々なコンサルタントが入っても成果が出ない。
コスト削減がすでに限界と経営者は気づいている。だけど経営や現場に対し、改善という行動や声かけをやめたら。。。と不安。
もうどうしたら良いかわからない。コスト削減が声だけになっている状態。
現場や従業員もすでに気づいていて、経営者がどんなことを言っても、「もう無理」と会社全体が不安・不信・不満の状態。経営者の言葉に不信感を持っている状態です。
そんな会社に伺うと社内全体がどんよりとしています。
もちろん、改善ポイントもあるのですが、経営者が依頼した色々なコンサルタントが入ってコスト削減をしようとしても、現場は意欲が下がっているから動かない。
経営者も現場も最初から諦めているので、コンサルタントがどんな良い提案をしても疑心暗鬼で動けません。
どんどん深みに入り、会社の力、成長への意欲自体も減退している状態です。
2.利益が出ているのに、従業員の雰囲気が重い、暗い、喜んでいない。
せっかく利益が出たのに。経営者は良かったと思っているが、なんとなく現場の雰囲気が暗い。従業員は不満顔。給与も上げたのにやめていく人が増えている。
原因は働く目的の喪失。コスト削減が働く目的の一番になっている状態。
「会社が苦しいからコストはかけない、経費を抑える。効率化。無駄をなくす」
こんな内容を強く継続して伝えていませんか?
働く目的がコストを抑えることになっていませんか?
“会社の利益のために働く”
そのために自分の給与や仲間の収入が減る。仕事が厳しくなる。
最悪の場合、仲間が辞める。取引業者に無理を言わなくてはならない。
本当はお客さんのため、会社のためにもっと色々と働きたいのに、コストを理由に動けない。提案が却下される。
そんな心理状態が社内の雰囲気を悪化させ、結果として社内の活力や新しい動きすらない状態。コスト削減への意識が経営者の中で偏重していたり、改善の強度が長く続いた状態で発生します。
3.今以上のコスト削減が会社の運営自体を脅かす状態になっている。
現実的なコスト削減が限界を迎えた状態。大企業や他社の数値、業界平均目標、会計事務所や金融機関から提示される数値目標を意識しすぎて、自社にそぐわない改善目標が立てられている状態です。
人員コストを抑えた結果、本来必要な営業日数が維持できなくなった。
経営者も現場も肉体的・精神的に疲弊し、一人でもかけたら商売自体が成り立たない。
身体的だけではなく、精神的な疾患で体調を崩す社員が増える。
従業員の働く時間を減らしすぎて、経営者や経営者の家族が大きな無理を強いられている状態。
あなたの会社をよく分かっているコンサルタントが入っていれば、ちゃんと考慮した目標設定をしてくれるでしょう。一方でいきなりコスト削減に入ったコンサルタントがこのことを理解してくれれば問題ありませんが、他社競合や一般的な業界数値の目標設定を立てた場合は注意が必要です。
症状としては、かなり危険な状態、すぐに手を打たないと雪だるま式にマイナスが発生し、末期的な状態に進行してしまいます。
経営者自身が疲弊してしまう。そのために経営自体の存続も危うくなる可能性があります。
4.優秀な人材、間違いなく自社で働き続けてくれると思った人材が辞めると言い出した。
優秀な人材ほど世の中の情勢を正しく把握し、あなたの会社や中小企業がどの道を進むのが良いかを考え、将来を見据えて行動します。
コスト削減の先に何があるか?これは明確に見えていますか?
今のままの価格で、大企業や他社競合と勝負できるのか?
原材料や経費、人件費が上がる中で、本当にコスト削減を続けられるのか?
自分の将来、給与は上がっていくのか?
今勤めている会社に未来はあるのか?長く安心して働ける会社か?
自分の働きがいはあるのか?
経営者はもちろん、従業員もそのことを考えています。
世の中を見れば、安売り企業だけが強いわけではありません。
中小企業ほど商品やサービスの価値を高め、自分たちが誇りを持って提供できる価格で売れる会社が本当に強い。コスト削減をしていても先はない。優秀な人材ほど、そのことが分かっているからこそ、今の会社に見切りをつけ始めているのです。

5.いつになったら成果が出るのか?ゴールが見えない。
これは手作業の多い食品製造業やサービス業、機械投資が難しい中小企業に多いパターン。
コスト削減や効率化の前提が、スタッフの熟練度(スピードや仕組みへの慣れ)となっている場合。
コスト削減のコンサルティングでもよくあったケースです。
「いつになったら改善しますかね?」
「導線や仕組みは変えたので、あとは現場スピードが上がれば成果は出てきます」
コンサルタントにしても、改善への提案はしたので、あとは現場の熟練度アップと意識アップだけという回答。
じゃあ、いつまで我慢していられるか?
改善には時間がかかるけど、その前に会社が厳しくなったら。
常にゴールの見えない改善が、経営者や会社の財務だけではなく、現場リーダー、従業員に負担と不安を与えます。改善にかかる時間が長ければ、その負担はより大きく。
そのうち改善自体に疑問や疑心が生じ、成果が出る前に仕組みを戻したり、別のやり方に変えてしまう。その繰り返しで会社全体が疲弊した状態。
私も何度か陥った間違いです。
その間違いを経験し、見直した結果、こういった現象がある場合はコスト削減をやめて方針転換しましょうとお伝えすることも多いです。
中小企業で機械化が難しく、人手が中心の会社の場合。現場の生産性向上ほど腰を据えてじっくりと取り組むことが必要です。現場の生産性は簡単には上がらない。そう思っている方が良いくらいです。
6.本来無駄ではないコストや経費が、無駄と判断されるようになった
「社長、またコスト削減ですか。。。」「社長、それも無駄なコストではないですか?」
そう言われたことはありませんか?
どういう状態かというと。
“コスト削減のために、新しいムダを創り出している状態”
・未来への投資
・人材育成への投資、将来を見据えた人材の雇用
・従業員の時間的なゆとり、発想やコミュニケーションの時間
・経営者の学びや人脈をつくる費用
経営や事業、将来にとって本来必要なはずなのに、コスト削減の旗印のもと、ムダなコストとして削減されていく。
育成に時間がかかるという名目で、新入社員ではなく、即戦力の中途採用ばかり。
新しく若い世代が入ってこないため、組織内に新しい活力が注入されず老齢化した組織として固まり、世の中の流れにのれない会社として衰退していく。
それは既にコスト削減の本質から離れています。
コスト削減を推進する組織にとって、「コスト削減のために」は非常に強い影響力をもち、経営者すらも縛りつけるものとなるのです。
偏重しすぎたコスト削減の弊害ともいえる状態。新しい方向性を導入する段階に入っている状態です。
7.新しい商品やサービスが現場から上がってこなくなり、焼き回しの企画が増える
「さすがに新商品開発や企画会議の時間までは削減しないよ〜」と言われる方もいらっしゃいます。
ですが最近、新しい発想の商品提案がなくなった。昔やった販促企画の焼き回しが現場から上がってくるようになったと感じる方はいませんか?
新しい商品や販促企画がないから、安売り・値引きなどで集客・売上を作らなくてはならないようになってきた。
そのために、さらなるコスト削減。効率化をしなくてはならない状態。
典型的な“負”のスパイラルに陥っています。
原因は精神的な余裕がコスト削減によって失われている状態。
常に現状の仕事や時間、早くしなければという精神的に追い詰められた状態で、良い商品やサービス、販促企画が出てくると思いますか?
時間がない、アイデアが浮かばないからとりあえず前に企画したもの、安売り・値引きの企画に走ってしまう。
この繰り返しで、商品やサービス、企画の質はさらに低質化していく。
おのずと未来は見てきますね。
コスト削減を優先させ、今の商品、今の価値のままでいれば成長している他社競合に遅れをとる。安い値段でしか売れない。そのうちコスト削減が限界を迎える。
伸びている会社の現場で話しをしていると精神的な余裕があります。新しい発想やアイデアも出て来ます。あなたの会社はどちらですか?
8.コスト削減が進んでいるのに財務状況が改善せず、外部機関からさらなる改善を求められる
銀行等の金融機関、会計事務所、専門家等からさらなる改善を求められていませんか?
会社一丸で頑張っているのに財務状況が改善しない。数字は改善しているのに、まだまだ利益アップが必要と言われる。
金融機関からの調査が入る。融資を渋られる。借り入れ条件の改悪変更。
経営改善計画書を作るように求められたり、お願いしていないのに一番厳しいシナリオの財務シミュレーションを持ってこられた。
コスト削減が無理ならと売上アップをと、現実とかけ離れた売上計画目標が出てきた。
どこを削るの?という状態。
あらゆる削減をしたのにという状態。
既にコスト削減という方法が破綻をしている状態。
利益=売上—経費 と思っていませんか?これはあくまでも財務諸表上の話。
利益を別の出し方で考えて行くことが必要な状態です。

9.従業員のモラルが低下、崩れてきたと感じる。当たり前にできていたことでミスが連発する
例えば。仕事場、店舗、社内が雑然としてきた。汚れていても、ゴミが落ちていても誰も見ないふりをする。従業員の車や営業車・配送車を見ると乱雑に駐車されている。ちょっとの時間だからと、止めてはいけないところに停めている。車の内外が汚い。
心地よい挨拶ができなくなった。時間が守れなくなった。決められた提出物の期限が守れない。服装や身だしなみが乱れた。ミスしても謝らない。
仕事の質が下がった。納期ミス・発注ミス・商品の仕上げ、包装が乱れる。
お客様からのクレームが増えた。クレーム処理がうまくできない。
社内の報連相やコミュニケーションがとれていない。人間関係までギクシャク。
こんなことに気づいたら、原因はコスト削減の取り組みにあるかもしれません。
以前はできていたことが、できなくなってきている。コスト削減によって明らかに社内のモラルが低下している状態。
なぜなら。
モラルを下げても許される理由が“コスト削減のために”になっているからです。
「スピードを上げているので、多少仕事が雑でも良い」
「時短だから、仕事していたら、それ以外の掃除や挨拶といったことは多めに見てもらおう」
「スピード重視のために、多少のルール違反は良いだろう。なぜならスピードが第一だから」
社内外が汚れ、社員のモラルが乱れれば、お客様や地域の人は気づくもの。
企業や店舗のブランドを大きく低下させる要因になります。
なぜなら、ブランドとはそこで働く人にとって決まるからです。
今までに頑張って作ってきたブランド力が落ちる。その結果はわかりますね。
意外と経営者自身も気づいていない時もあります。
外部から見たら、一目瞭然なのですが。。。

10.気合いと根性論が中心のコスト削減になったら終わり。
頑張ればなんとかなる。とにかく頑張ろう。
成果が出ていないのは、現場の意識や本気度・努力が足りないからだ。
現場のリーダーが必死に、汗かいてハッパをかけても成果が上がらない。
こう言い始めたら、感じ始めたらコスト削減は終わり。
なんとかしないといけないけど、どうしたら良いかわからない。
世の中の多くが。コスト削減は当たり前の方法という考えを改めていく必要があります。
経営者や現場の言葉に既に力はなく。
現場が求めているのは、何か一つでも、少しでも良いから成果を実感できる取り組みや施策。
これは既に現場で行うのではなく、経営者自身が動くことに限られてきます。
あなたの会社はいかがですか?
気づいている方、気づいていても見ないふりをしている方。
外部の視点、お客様、地域の人は気づいているかもしれません。
10年以上、経営コンサルタントとして中小企業のコスト削減コンサルティングを行なってくると、その会社に入った瞬間、経営者とのお話で、本当にコスト削減という利益改善が良いかどうかがわかります。
世の中の経済や、利益を出している企業を見ても。
中小企業が価格競争で大企業に勝つことは今後ますます難しくなります。
コスト削減による未来の見えない利益改善か、お客様に支持される価値アップと適正値づけによる新たな利益改善か。大きな転換点を迎えている企業が多くあります。
まずはご自身の会社をチェックして見てくださいね。
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