値上げに反対された本当の理由|社長の決断が組織で止まる3つの原因

値上げに反対された本当の理由|社長の決断が組織で止まる3つの原因

「値上げをしようと思う」
そう社長として決断し、会議で切り出した時に空気が止まる。明らかに反対の声が出そうな雰囲気。

社長として、会社の存続をかけて経営を担っている側から見れば、

  • 市場環境は厳しい
  • 原材料をはじめとして包装資材、水道光熱費、多くのコストは上がり続けているし、人件費や給与も引き上げなければならない。
  • 金融機関や会計事務所に相談しても、経営改善や収益性改善を指摘される。
  • 売上を取れたとしても、利益が残らなければ意味がない

今の数字を見ていれば、このまま続けても利益は出ない。削れるコストは全部減らしたし、経営者の役員報酬も下げた。

その上での、値上げの判断のはずなのに・・・。

会議では、

  • 客離れや売上が減少する不安
  • 値上げが注目されている今、値上げするという不安
  • お客様の不満が増える不安
  • とにかく感情的に反対している
  • 地方だから、都会とは違う

そんな声が現場から上がり、社長は値上げの理由の説明と、従業員への説得(懐柔)に終始してしまう。

経営者としては、会社や従業員を守るために、考え抜いた必要な決断なのに。

厳しい今だからこそ、社内一丸で苦境を乗りこえて行きたいのに現場と意識が一致しない。

→社長の危機感が現場に伝わらない理由の詳細はコチラから

なぜ、従業員や現場が値上げに反対の姿勢をとりがちなのか。

その本当の原因は、どこにあるのでしょうか。
今回は「値上げに反対された本当の理由」について整理します。

1.値上げでよくある反対意見は本当の理由?

値上げをしようとした時、現場リーダーや従業員からよく出てくる声があります。

「うちでは、その値段では売れないです」
「お客さんが離れてしまいます」
「近くの同業・競合や、大手よりも高くなってしまう」
「世の中は物価高で、地域の所得も上がっていない。うちも売上や客数が落ちているし・・・。今はタイミングが・・・」

値上げに対する反対意見は色々とあります。

社長が一番信頼している幹部や古株の現場リーダーが、社内の誰よりも強く反対する、値上げに対して及び腰になる。
そんな例も少なくありません。

もちろん、会社のことを思って発言してくれる従業員もいます。

しかし、一方で“お客様のことを考えた”ような発言で、従業員自身の声を代弁する。

例えば、
表向きは「お客様が納得しない」と反対しているけど、本音は「従業員自身が納得していない」
実は、ここに本当の原因が隠れています。

2.思ったような値上げができない本当の理由

①社長と現場の責任に対する意識のズレ【ある地方の和菓子店の実例より】

「この商品、値上げしようと思うんだけど、いくらにすると良いと思う? みんなで考えて」
この言葉を聞いた時、私はドキッとしました。

これは、ある地方にある老舗和菓子店の話。
初めて私がご支援したのが3年前。値上げを含めた商品の価格改定による利益改善をメインテーマとしてご支援。その時は、社長と専務と私で各商品ごとの価格を見直し、値上げを実行。わずか半年で営業利益は売上対比で7%以上改善し、会社は大きな黒字に転換しました。

そして3年後です。前回の値上げ後、一旦ご支援は終了していましたが、社長より連絡があり久々にご訪問。決算書を拝見したところ、3年間で会社は再び赤字へ転落。再度の値上げが必要な状況でした。

その値上げの打ち合わせを社内でしていた時に、社長が販売部門リーダーに問いかけたのが先ほどの言葉。

ここを変えないと、次の値上げは成功しないし、5年・10年後の利益体質を維持することも難しい。と正直に思いました。

日々の売上や集客を見ている現場に、値上げの設定を任せても答えは出せない。なぜなら、彼らが見ている(責任を持っている)のは日々の売上と客数の増減であって、利益につながる値上げや値づけは、経営者の責任と捉えているからです。

社長としては「現場主義で・・・」「現場の声を聞いて」と思ったのかもしれない。

だけど、現場は「経営者がやるべき、値上げの責任を負わされた」と思ってしまう。

表面的には、売上や集客、お客様の不満を値上げ反対の理由としているけど、実際は、自分たちが負わされそうになっている値上げの責任は経営者が担うものという意識のズレ。

→「社長がいくら頑張っても組織が変わらない理由」をコチラでも詳しく書いています

この会社が、再び赤字に転落した原因は、
値上げができなかったことだけはありません。
「値上げの責任」を、経営者の責任として捉えていない、と現場に思われてしまったこと。

これが、本当の理由の一つ目です。

②値上げの説明ではなく、やる意味の共有が不足している

「原材料やコスト、人件費が上がったから・・・」「利益が出ておらず、会社の経営が苦しいから・・・」
値上げの”理由”を説明すると、ほとんどの会社ではこうなります。

ですが、値上げをやる”意味”は何か?

  • なぜ、今、値上げをしなければならないのか?
  • 値上げをしなかった時、会社はどうなるのか? みんなの仕事や生活や給与はどうなるのか?
  • 今後、会社はどのような方針で進むのか?

利益が出ていないをもう一歩深め、会社や従業員にとって今後どんなことが起こるのか。これを伝えることが、値上げをやる意味の共有です。そうしなければ、従業員は現場は「自分ごと」として考えてくれません。

まずは、このことが社長の中で整理できているか。

その上で、現場に説明できる言葉になっているか。

この点が抜けていると、現場にとって値上げはただの“怖い決断”になってしまいます。そして、単なる「一時しのぎ施策としての値上げ」になってしまうと、「今、しなくても・・・」「他の会社の様子を見ながら」という楽観的な声が出てきます。

値上げの真の理由が、現場に伝えられていない

これが本当の理由の二つ目です。

③値上げを社長自身が迷っている

社長として、経営者として値上げ自体はとても怖いものです。そのことは十分にわかります。

そんな中でも、値上げをしなければ経営は苦しくなり、会社はもたない。

「値上げは不可避」とわかっているはずなのに、

  • 値上げの上げ幅はどうしよう?
  • 他社競合の様子はどうなっているのか?
  • どのタイミングでやるのがベストか?
  • 現場から反対されたら?
  • 売上や顧客離れが予測つかない

このような理由を並べて、社長が値上げに対して100%決断しきれていない時。社長の迷いは必ず、現場に伝わります。

「社長も大変だよね。いつも心配事が多いよね・・・」そう従業員に言われて、同情されていると感じることがあるかもしれません。

従業員や組織は経営者の迷いに敏感です。変化が大きく、経営者のリーダーシップが求められる今、優柔不断と思われたら、会社や社長への信頼感は失なわれていきます。

社長が決めるべき値上げを、決めきれない状態であれば従業員や現場はついてきてくれません。

決断の強さは、数字ではなく「経営者としての覚悟の明確さ」で伝わるからです。

これが本当の理由の3つ目です。

 

3.値上げを社内一丸で取り組める会社、反対される会社の違い

値上げが反対される理由は、「価格設定」や「値上げのしかた」、「単なる売上や集客の低迷」ではありません。

従業員も「値上げ」しなければ、会社が大変ということはわかっているのです。

それでも、社長の決断に対し、反対してしまう根本的な原因は

  • 責任の所在が曖昧(経営者としてやるべきことをやっていない)
  • 意味が共有されていない
  • 社長の覚悟や決断が整理されていない

この3つです。

値上げが社内一丸で取り組める会社は、価格を決める前に「なぜやるのか」を整え、社内で共有することから始めます。

そして、値上げの責任は経営が負うと明確にしている。

逆に値上げが反対される会社は、実際の「方法論」や「値上げによるマイナス影響」ではなく、組織の意思決定の仕組みに問題があります。

だからこそ、値上げは単なる価格改定ではなく、組織として一歩成長できる機会でもあります。

経営者の判断で止めるのか。
組織全体での決断にするのか?

その違いが、会社の一体感や、未来をつくります。

まとめ 〜 値上げは会社や組織を成長させるチャンス

私は経営改善や組織強化の伴走支援に入る際、まずはその会社が値上げができるかどうかを見ます。

値上げは短期間で利益や収益性が改善するメリット以上に、経営者の決断や危機感を社内に浸透させる効果が高いからです。

中小企業ほど、

  • 価格や値上げを決定する
  • 値上げによって、離れる顧客がいることを受け入れる

この2つは、社長にしかできない決断。
つまり、経営者が改善に向けて本気度を示す「経営判断の象徴」となるからです。

値上げはその第一歩になりやすいテーマとして効果が高い。

値上げが動く会社は、次の取り組みに対しても会社全体で意識を共有し、前向きに動けるようになります。

→「会議で決めたことが実行されない理由」

値上げの真の目的は、利益を確保したり、高めていくことだけではありません。
値上げの先にある「経営者の決断で、動ける組織になる」ことで、次世代へ会社をつなげていく強い基盤作りです。

 

【著者プロフィール】
経営伴走パートナー/ミタス・パートナーズ代表
地方の小さな菓子店に生まれ、経営者である両親が売上や利益、従業員との関係に悩みながら意思決定していく姿を間近で見て育つ。
現在は「やり方」よりも「決断し、できるようにする」を重視し、食品製造小売業・飲食業・サービス業を中心に、価格戦略の見直しを切り口としながら、「経営者の決断を整え、組織実行までを支える伴走支援」を行なっている。地方にある中小企業250社以上の動ける組織づくりと利益3倍化を支援を行う。

危機感の整理や共有の設計は、社内だけで進めるのは簡単ではありません。
経営者の思考を整え組織に伝わる形にする伴走支援を行っています。

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