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「うちは大丈夫」が会社を止める。中小企業で改革が進まない「安心の詰まり」の正体

「うちは大丈夫」が会社を止める。中小企業で改革が進まない「安心の詰まり」の正体

資金繰りの悩み、原材料や人件費の高騰。大手チェーン店の台頭や価格競争。
中小企業の経営者の危機感は非常に高いものです。
ところが、一歩現場を見れば、いつも通りの穏やかな日常が流れています。

なぜ、これほど厳しい状況なのに

  • 現場が危機感を持たないのか?
  • 改善の動きが出ないのか?
  • 組織が変わろうとしないのか?

→社長の危機感はなぜ現場に伝わらないのか?数字よリも大事な「思い」の翻訳術を解説しています。

多くの社長が抱えているこの悩みの正体は、社員の意識の低さではありません。
それは、組織の仕組みが生み出している「安心の詰まり」という致命的な課題です。

1.組織が会社の危機に気づかず死に至らしめる|「茹でガエル」の罠

「茹でガエル」という現象をご存知でしょうか。
カエルをいきなり熱湯に入れると、驚いてすぐに飛び出してしまいます。しかし、通常の水から少しずつ温度を上げていくと、カエルは「緩やかな温度変化」に気づかないまま、茹でられて死んでしまう。

これと同じことが、中小企業の組織で起きています

なぜ組織は「温度変化」に気づかないのか

社長は、常に「外の世界」を見て、自社の方向を思考しています。市場の冷え込み、競合他社の動向、銀行の顔色。これらは常に経営者の危機感。まさに「熱湯」の状態。

一方、現場はどうでしょうか?
会社がどれほど赤字でも、同じように出社すれば、同じ仕事があり、給料日には同じ額の給与が振り込まれます。現場にとっての「今日」は、昨日からの延長線上でしかありません。
つまり、緩やかな温度変化。「根拠のない安心感」があります。

この「情報の違い・・・社長だけが危機を知り、感じている状態」こそが、組織を動けなくする「詰まり」の正体です。

2.【事例】売上5割減。それでも組織が動かなかった理由。

私が実際にご支援した、食品製造小売会社の事例をお話しします。
ご相談をいただいとき、会社はすでに深刻な赤字状態でした。
2年前と比較して、売上は半減。業績の良い時に工場投資による銀行返済が重くのしかかり、運転資金は枯渇寸前。何も手を打たなければあと2年で会社は倒産する。

2年前までは

  • 同業が苦しい中でも、売上・利益は大きく右肩上がり
  • 業界に先駆けた販路で、一人勝ちの状態
  • これから地域を牽引する企業として注目を浴びる存在

だった。今は崖っぷちの状態。
そして、いざ改善をしようとした時、社内に危機感はなく。
耳を疑うような言葉ばかり。
「パートが多いからできない」「個々のスピードが違う」「改善したら、みんなの給与が減ってしまう」
製造部門のリーダーを筆頭に、できない理由を挙げるばかり。

→社長だけが焦っている会社の共通点。社長の焦りが組織を止める理由を解説しています

「うちは大丈夫だと思っていた・・・」
そう言いながらも、社長の中には将来への不安はあったはず。
実際は新商品開発、新規販路の開拓、新ブランドの立ち上げなどを数年前から進め、具体化をしてきていました。
社長として、次なる手を打ってはいたのに。
現場は一歩としても動かない状態だったのです。

この会社は「問題がある会社」ではありませんでした。
「問題が見えないまま、茹でられ続けてきた会社」だったのです。

 

3.「安心の詰まり」を生み出す3つの原因

なぜ、変化の必要性がこれほど迫っているのに、現場は動かないのか。そこには3つの構造としての原因があります。

①社長の「思い込み」が作る情報フィルター

「社員に不安をさせたくない」「経営者が弱みを見せてはいけない」「自分の行動を見て感じてほしい」
そう考える中小企業の社長は少なくありません。しかしこの発想が、現場に届くべき情報を止めてしまう。結果として、現場には「うちは大丈夫」「まだ、なんとかなる」という誤ったメッセージが伝わり、危機感がない状態を招きます。

②過去の成功体験にとらわれる

社長の中にも、どこかで「まだ、大丈夫」という意識があったことも否めません。
これまで自分はうまくやってきた。他の経営者や地域の人からは「すごい会社」だと今でも、言ってもらえる。現実の数字から目を逸らし、外部からの良い評価があったこと。過去の成功体験に囚われ、大きな変化に対して決断できていないこと。
経営者自身の思考が整っていない状況です。

現場は、
会社に強い主力商品があり、今でも定期的に引き合いがあることも、危機感を失わせる要因となっていました。
受注は明らかに減っているのに、定期的に注文は入る。新規受注も入る。製造現場は作る数は減っているけども、同じ仕事が問題なく繰り返されていく。
緩やかに悪化している「変わらない日常」の中で、「こういう時もある」「うちの商品を支持してくれるお客様がいる」。
こういった過去の延長線上で進んでいることで、本当の危機に気づけない。

社長として「過去の成功体験」にとらわれる
現場として「過去の成功体験」にとらわれる
その結果、決断は先延ばしされ、動きは止まるのです。

③業績が悪くても、給与は出るというセーフティネット

会社の利益がどれだけ悪化しても、個人の生活(給与)がすぐには下がりません。これは社会的なセーフティネットとして重要な仕組みです。
しかし、改善の現場では「会社は苦しいが、自分の生活はまだ大丈夫」という感覚を生み出しまします。
これは、組織が変化する必要性を鈍らせる「麻酔」として働くことがあります。

 

4.「安心の詰まり」を解消し、組織を改善に進めるための3ヶ条

実際、事例の会社で現場が動き始めたのは、経営会議である経営幹部が
「本当は、リストラなんかしたくない・・・」と発言したことでした。
この一言が、現場に「変化をしなければ、将来起こるリスク」を肌で感じさせました。

「安心の詰まり」を解消するために、社長がやることは、危機感を煽って社員を怯えさせることではありません。組織の「情報」を正しくコントロールすることです。

①「今の会社の現状と現在地」を見せる

今、会社がどこで苦戦をしているのか。何もしないまま1年経つとどうなるのか。事実を正直に共有します。恐怖を煽るのではなく、「共に乗り越える壁」として、共有することです。

②「変わらないことへのリスク」を具体化する

現場に限らず、人は「変わる」ことへ不安を感じますが、それ以上に「今のままでいることへの将来予想」が明確になると動けるようになります。業界の動向、中小企業の現実、お客様からの厳しい声、銀行からの評価。社外からの情報を、社内に正しく伝えることです。

③変化の先にある「新しい安心」を提示する

今の停滞する安心ではなく、改善を進めていく先にある「自分たちが変化することで得られる、強い基盤」というビジョンを社長の言葉で伝え続けること。これが安心感につながります。

 

まとめ 社長が一人で「危機感」を抱えていませんか?

組織を大事にするあまり、社長一人が全ての「危機」を抱えてしまう。
そのことが、結果として「社員や現場の、将来に対する危機感」を奪ってしまっている。
それは、社員から「共に戦い、成長する機会」を奪ってしまっていることと同じです。

「安心の詰まり」をワンランク上に高め、社内の動きを高めていく。
社員や現場を責める前に、まずは「どのような情報が、現場に届いているか」を見直してみませんか?

→「みんなで決めよう」が組織を止める。中小企業にありがちな「責任の詰まり」を解説

「茹でガエル」状態の組織が一番怖い。
もう一度、一丸となって動けるチームになる。
そのために、「組織の仕組み」を整理することを一緒に取り組んでいきましょう。

 

【著者プロフィール】
経営改善コンサルタント/ミタス・パートナーズ代表
地方の小さな菓子店に生まれ、経営者である両親が売上や利益、従業員との関係に悩みながら意思決定していく姿を間近で見て育つ。
現在は「やり方」よりも「決断し、できるようにする」を重視し、食品製造小売業・飲食業・サービス業を中心に、価格戦略の見直しを切り口としながら、「経営者の決断を整え、組織実行までを支える伴走支援」を行なっている。これまでに地方にある中小企業250社以上の動ける組織づくりと利益3倍化を支援を行う。

 

危機感の整理や共有の設計は、
社内だけで進めるのは簡単ではありません。
経営者の思考を整え、
組織に伝わる形にする伴走支援を行っています。

もし、
「誰かに話を聞いてほしい」
「気持ちをわかってほしい」
そういう方の相談。私でよければ伺います。

経営者の判断に寄り添う相談を大切にしています。

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